「ロック茶わん」などの実例から学ぶ、芸術としての陶芸作品

「ロック茶わん」などの実例から学ぶ、芸術としての陶芸作品

使える作品とオブジェ的作品

工芸とは、陶磁やガラス、漆工などさまざまな素材を使い、熟練技術により器物を制作する分野です。そのうち、茶わんや皿など「使える」ものと、オブジェ的な「使えない」ものがあります。オブジェ的なものは、陶の素材を用いた芸術作品と位置付けます。工芸品にも機能性と美術的な美しさを併せ持つものもありますが、使うことを目的にしないことで、工芸の枠を超えた芸術表現が可能になりました。近年、20~30代の作家による陶を使ったオブジェ的な芸術作品は、世界で高い評価を受けています。

汚れて古い物を美しいとする美意識

例えば茶道で使われている茶器は、「使える」ものではありますが、オブジェに等しいような価値を持っているものがあります。室町時代の終わり頃に生まれた茶の湯の伝統である「わび」「さび」には、諸説ありますが、「わび」は「粗末・汚い」、「さび」は「古い」という意味があります。割れたり、欠けたり、ゆがんだりした、西洋では失敗と思われる物を美しいと感じるのは、日本独特の捉え方です。
こうしたゆがみをテーマに制作された現代のオブジェを対象とした研究もなされています。例えば「ロック茶わん」は、既存の概念を壊すこと=現代における「ロック」と捉え直し、制作されたオブジェです。特徴を知ることで、日本の特別な美意識をより深く理解できるのです。

陶を使ったファインアートの誕生

18世紀後半のヨーロッパで生まれたファインアートは、純粋芸術と呼ばれ、芸術的価値のみを追求した活動や作品を指します。美術分野の代表的なファインアートが絵画・彫刻であった中で、100年位前から彫刻家によって陶の素材が用いられるようになりました。
現代美術には、必ずメッセージがあります。芸術作品を理解し、そうしたメッセージを受け取るには、単に鑑賞するだけではなく、メッセージを意識し、自分で思いを込めて作品を作ることが有効で、なおかつ非常に貴重な体験になります。

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先生情報 / 大学情報

京都美術工芸大学 芸術学部 デザイン・工芸学科 特任教授 川尻 潤 先生

京都美術工芸大学 芸術学部 デザイン・工芸学科 特任教授 川尻 潤 先生

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芸術学

先生が目指すSDGs

メッセージ

陶芸で土をぐっと握る行為は、人間の原始的な感覚に作用するため、リラックスやストレス解消の効果が期待され、認知症予防にも取り入れられています。私は、美術家・陶芸家として陶作品を発表していますが、見た人をびっくりさせたり、感動させたりと、作品を通じてコミュニケーションをしている感覚があります。自分の作品に感想を持ってもらえることは、自己肯定感にもつながります。座学と実習を通じて、ものづくりの喜びを味わえるのが、芸術学部工芸領域(陶芸)で学ぶ醍醐味(だいごみ)です。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

京都美術工芸大学に関心を持ったあなたは

本学は2012年に開学し今年で11年目を迎えました。キャンパスがある京都東山は京都駅から徒歩圏内で、近くには有名な寺社仏閣や文化施設などが点在する京都を代表する観光地にあります。本学は「建築学部建築学科」と「芸術学部デザイン・工芸学科」の2学部2学科からなり、伝統と先端が融合する都市「京都」で、建築と芸術をはじめとする複数の視点から学びを深めることで、これまでにないクリエイティブを生み出す力を身につけることが可能です。また、グループ校との連携により、建築士資格が在学中に取得できることもできます。