気持ちまで伝わるメディアをめざして

気持ちまで伝わるメディアをめざして

「夕日の美しさ」は伝えられるか

ある日、黄金色に輝くまばゆいばかりの夕日を見ました。そのあまりの美しさに、何としても誰かに伝えて感動を分かち合いたくなります。しかし、心に刻まれた感動は紛れもなく存在していても、それを相手の心の中にそっくり転写することなど不可能。テレパシーでもなければ到底かなうことではありません。そこで、われわれは言葉やイメージ画像といったメディアの力を借りて、他者に主観的な心象を伝えようとします。また、各メディアの特性を考慮して、状況に応じたその生かし方を考えます。
例えば、いくら感動したからといって、いきなり友だちに電話を掛け、「ねえねえ、今すごくきれいな夕日を見ているんだけど」と声を弾ませても、伝わるのはあなたが興奮しているらしいという事実だけ。肝心の夕日の美しさは現地に置き去りにされたままです。
ところが、それがテレビ電話(ビデオ通話)なら話は違ってきます。不鮮明ながらもリアルタイムで映し出される夕日を見れば、遠く離れた友だちにもその情景が多少でも伝わるはずです。文字通り、テレ(遠隔)+ビジョン(視覚)なメディア特性が、「臨場感」をもたらすのですね。

分かり合う、通じ合うための「共感メディア」

人類の歴史を振り返ると、口承伝承から文字へ、絵画から写真に、そしてアナログ放送からデジタルハイビジョンといったように、対象をより鮮明に再現するために、メディアが進化を遂げて来たことがわかります。
それは、きれいだとか、便利だからといった単純な理由によるものだとかぎりません。むしろ、心のままに感じとった心象風景をダイレクトに伝えたいと思う気持ちが、求め続けてきた結果なのです。喜びや悲しみ、あるいは愛しみといったさまざまな感情を、誰かと分かち合うことのできる「共感メディア」の存在こそ、真のメディアの進化といえるのではないでしょうか。

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東京学芸大学 教育学部 芸術・スポーツ科学系 美術・書道講座 美術分野 教授 正木 賢一 先生

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