「祭り」から発想して、豊かな都市づくり、景観づくりをめざす!
旅行者をもてなせる公共の場をつくりたい
観光は、旅行者にとっては日常とは少し離れた国・地域の「光(資源)を観て」、気持ちをリフレッシュしたり、新しいきっかけが得られる体験です。ですから、旅行者が必ず通るような駅前広場やメインストリートなどの公共空間は、旅行者を心地良く楽しませる場、もてなせる場でありたいのです。そうした都市空間づくりのヒントを得るために「祭り」が注目されています。日本の祭りの多くは、神輿(みこし)や山車(だし)、踊り手が町なかを巡ります。その動きや独特のパフォーマンスの「見せ場」となる場所はどこかを調べると、地域の人が大事にしてきた町の場所がわかったり、特徴的な地形、広場、交差点、景観が生かされているのがわかるのです。みんなが町の屋外を楽しむ瞬間がそこにあります。
舞台としての都市空間:観光客のための環境整備
観光資源として祭りを活用するところが増えてきましたが、もともとは地域住民のためのイベントですから、観光客のことはあまり考えられていませんでした。観光客の行動を調べると「もっと町がこうなったら祭りがより楽しめるのに」というところがたくさんあります。数十万人の観光客が訪れる祭りでは、「見せ場」近くの沿道建物の2階が観客席になったり、段々畑がスタジアムのようになったり、多くの工夫があります。演劇の舞台のように、ステージと観客席、楽屋の役割を意識した都市空間づくりの方法論も提案されています。
写真に撮りたい景観づくり
Facebook、LINEなどのSNSによる情報発信が盛んになった今、美しい写真を撮れる環境が整えば、撮影者が喜ぶだけでなく、その写真をきっかけに訪れる人が増えることも期待できます。そこで、観光客が撮影した祭りの写真を収集して分析すると、祭りの「見せ場」の撮影に多くの人が選ぶ撮影場所や背景がわかりました。こうした場所を居心地良く整備したり、みんなで協力して背景となる町並みや自然の景観を良くしたりすることで、祭りも町のコミュニティも豊かになるのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 都市環境学部 観光科学科 准教授 川原 晋 先生
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