霧の謎を解き明かす! 航空機の安全を守るために

霧の謎を解き明かす! 航空機の安全を守るために

ヘリコプターが飛べない

霧は、空気中の水蒸気が冷えて小さな水滴となり、地表近くに浮かぶ現象です。霧が発生すると視界が悪化するため、航空機の運航にとって大きな障害となり、飛行場に発生すると、離着陸に深刻な影響を及ぼします。特にヘリコプターは「有視界飛行」が基本であり、パイロットは周囲を目視で確認しながら飛行します。そのため、霧や厚い雲の中では飛ぶことができません。過去には、霧の影響で着陸に失敗し、航空機や空港施設が損傷する事故も起きています。このように、霧は航空機にとって大きなリスクとなるのです。

霧予報の難しさと課題

航空機の安全な航行には、霧の予測が重要です。また、パイロットが求めるのは「霧が発生するかどうか」だけではなく、「何キロ先まで見通せるか」というもっと細かい情報です。一方で、現在のコンピュータシミュレーションに基づく気象予報においては、1時間ごとの予測しかできず、さらに場所ごとの細かな違いも正確に予報しきれないという現状があります。その要因の一つが、霧の発生状況を測定したデータの不足が挙げられます。特に、夜間に営業しない飛行場では計測がほぼ行われていないため、霧の実態を正確にとらえるのが難しくなっているのです。

霧の計測とAIによる予測技術

霧の発生状況を詳細に把握するために、飛行場などに計測機器を設置して1~2カ月にわたる継続的な観測が行われています。計測には、光を発する装置と受光センサを組み合わせた機器を用い、霧の中の水滴がどれだけ光を遮るかを測定して、霧の濃度を算出します。さらにAIを活用して過去のデータを学習させ、同じような気象条件下で霧がどのように発生するかを予測する仕組みの開発が進められています。日本では気象の計測を行う研究者が減っており、霧についてのデータの蓄積が不足しています。今後は計測を積極的に進め、得られたデータをAI研究者と共有することで、より精度の高い霧の予測システムが構築されようとしています。

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防衛大学校 応用科学群 地球海洋学科 教授 菅原 広史 先生

防衛大学校応用科学群 地球海洋学科 教授菅原 広史 先生

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気象学、航空気象学

メッセージ

高校生のうちは「この教科が得意」「これは苦手」と決めつけず、先入観を持たずに学ぶことをお勧めします。私自身、大学で「物理化学」という授業を見たときに大きな衝撃を受けました。高校では物理と化学は別々の授業で、異なる分野だと思っていましたが、実はそれらは一体となって自然界の現象を説明するものだったのです。そもそもこうした分類は、人間が便宜的につけたもので、自然界はそのような区別とは関係なく成り立っています。視野を広げて学ぶことで、自分の得意なもの・好きなものを新たに発見することができるはずです。

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