豊かな水田を支える農業水利システムの最新技術
食糧生産を支える農業水利
稲作が始まって以来、田んぼに水を届ける農業水利システムが造られてきました。水田地帯では、水が川の取水口から水路に引き込まれ、枝分かれを繰り返しながら最終的にすべての田んぼの区画に届くようになっています。このような農業水利システムによって、田んぼに水を安定して供給することができ、安定した豊かな生産が可能となっています。
農業水利でのスマート農業
稲作では、水の管理が稲の収量や品質に影響を及ぼします。そのため、稲作農家は田んぼの水の水深を日々細やかに操作しなければなりません。一方、現在の日本では、農業の後継者不足への対策として、農業の担い手に農地を集中させる農地集積が進められており、農業従事者一人当たりの田んぼの区画数が多くなってきています。そのため、たくさんの区画の巡回に労力がかかり、田植えはするものの、普段の管理が行き届かないという問題が出てきています。
この問題に対する切り札として注目されているのが、遠隔監視や遠隔操作を行うスマート農業です。田んぼの水量の監視や、農業水利施設のゲートやバルブの操作を遠隔でできるスマート水管理機器は、既に実用化が始まっています。しかし、高額なために、田んぼのすべての区画への導入は難しく、普及率は低迷しています。
数学的な機器の配置
普及を進めるためには、たくさんの区画の中のどの区画へ導入するとメリットが大きいのかを、明らかにする必要があります。単に端から順に導入していくようなやり方は効率的ではありません。また、ある程度区画が集中している所の一部の区画だけに設置しても、そこにある設置していない区画を巡回しなければならず、非効率です。そこで、たくさんの区画の中から、機器を設置した場合に巡回労力を最も削減できる区画を数学的に導き出す方法が研究されています。
スマート農業化が進めば、稲作での格段の省力化が見込めます。少ない人手で安定的な食糧生産を行うための技術は、将来に向けてさらに研究を進める必要があります。
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先生情報 / 大学情報
岩手大学 農学部 食料生産環境学科(令和7年度から農学部 地域環境科学科 革新農業コース所属) 教授 飯田 俊彰 先生
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