モノから考える実験心理学
錯視とヒト
錯視は、ヒトが外の世界をそのまま知覚しておらず、脳の中で積極的に処理を行なった結果を示していると言えます。錯視を発見することは、視覚のメカニズムの新たな側面を見つけたことと同じ意味を持ちます。錯視を調べるためには、外の世界がどうなっているのかを詳しく知っておく必要があります。何を見ているのかわからないのに、それが錯視であるのか、錯視ではないのかを判断することはできない、ということです。錯視の中には、見えない部分に対しても「見ている(補完している)」錯視や、速すぎて「見えない」ものでも知覚に影響を及ぼす錯視もあります。錯視研究には、コンピュータはもちろんのこと、プログラミングやディスプレイ(特殊な例では高速プロジェクター)などの知識が重要となってきます。
自動運転とヒト
現在、車の自動運転技術の開発が世界各国で進められています。自動運転には、レベル0からレベル5までの段階が規定されていて、レベル2の自動運転ではドライバーは基本的に運転操作をしませんが、安全に注意をしながら必要なときには運転できる状態を保っておかなければなりません。運転はしなくていいけれど、居眠りをしてしまうわけにもいかないという状況下で、ドライバーはどのようにして過ごすのが一番よいのでしょうか?ドライビングシミュレーターを使った実験の結果、ドライバーが同乗者と会話をすることが安全に役立つ可能性が示されました。
「モノ」と実験心理学
上の二つの研究テーマは無関係のように思えるかもしれませんが、共通するのはどちらも「モノ」(映像や装置)に対するヒトの心理を対象としていることです。「モノ」の特徴をよく知っておくことはヒトの心理を解明することにもつながるのです。そして、「モノ」とヒトとのインタラクションを追究していくと、ヒトが「モノ」に対して何を感じ、どのような心理を持っているのかが、ユニークな形で浮かび上がってきます。
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先生情報 / 大学情報
新潟大学 人文学部 人文学科 准教授 中嶋 豊 先生
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