小さな一歩を踏み出すきっかけを作る、アドベンチャー教育とは?
成功の不確かなことに、あえてチャレンジ
アドベンチャー教育とは、ユダヤ系ドイツ人の教育哲学者、クルト・ハーンが提唱した教育手法です。そこでは、成功するかどうか不確かなことにあえて挑戦することに価値を置きます。成功あるいは失敗の体験を通じて、チャレンジ精神の土台を培うとともに、自己と他者をそれぞれ尊重できるような人間関係を築くための学びを与えていくという教育です。アドベンチャー教育におけるチャレンジの対象は、身近なところから大自然の中まで、目的や難易度によってもさまざまです。難易度が高めのものでは、木の上などの高所で互いの体を命綱で支え合うようなチャレンジを課す場合もあります。しかし、必ずしもハイリスク・ハイリターンでなければならないわけではなく、身の回りのちょっとしたリスクに挑戦してみることも、アドベンチャー教育の範疇(はんちゅう)に含まれます。
ファシリテーターとしての教育者
アドベンチャー教育では、目標を達成できる人もいれば、達成できない人もいます。その際、教育者がどのように失敗した人に接するかが非常に重要です。否定的な言葉や反応を示してしまうと、失敗した人は再びチャレンジしようと思えなくなってしまうかもしれません。また、成功した人と失敗した人とがどのように接するべきかについても、教育者は気を配る必要があります。このような役割を果たす立場の人を「ファシリテーター」と呼びます。アドベンチャー教育がうまくいくかどうかは、教育者がファシリテーターとして十分な知識と経験を持っているか否かにかかっています。
その気になれば見つかるアドベンチャー
何かにチャレンジするきっかけは、一人ひとりがその気になれば見つけることができます。例えば、「近所の街角で、ゴミ拾いをしてみる」「電車で高齢者が乗ってきたら、席を譲る」などです。それまでやろうとしてこなかったことも、一歩踏み出してみると、意外とできるものです。そうした小さな一歩を踏み出すきっかけを与えるのが、アドベンチャー教育なのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
玉川大学 教育学部 教育学科 教授 工藤 亘 先生
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