海外旅行を見つめれば、社会の変化が見えてくる
世界の7人に1人が海外旅行をする時代
世界の観光統計を見ると、ビジネスや短期留学も含めた国境を越える旅行は、1980年代は、出発地も訪問地も欧米や日本、オーストラリアなどの先進国が中心でした。一方、最近のデータでは、中国や韓国、南米諸国の割合が高まっています。経済のグローバル化で、これらの国でも富裕層が増えたためだと考えられます。さらに、格安航空会社(LCC)の登場など、旅行費用が下がったことも海外旅行を身近にしました。その結果、2012年には世界の国際観光客到着数は、年間10億人を超え、実に世界人口の7分の1に相当する人々が海外に出かけたことになります。
世界の経済や政治が地域の産業にも影響する
国際的な人の移動は、地域の産業にも影響を与えます。
例えば、日本でも有名なオーストラリアの観光地、ゴールドコーストは、1980年頃までは、ローカルな観光地でした。しかし、日本のバブル期に、日本の資本がホテルやゴルフ場などを開発した結果、日本人観光客が押し寄せるようになりました。バブル崩壊で日本の資本が撤退すると、韓国の資本が入り、日本以外のアジア諸国からの観光客が増え、さらに米国の同時多発テロ以降は、欧米諸国への入国が難しくなったアラブ諸国や南米からの観光客が増えているのです。
国際的な人の移動が新しい文化を生む
また、さまざまな国からの観光客は、文化にも影響を及ぼします。
ゴールドコーストでも、日本人が多かった時期は、日本語熱が高まり、アラブ諸国からの観光客が増えた現在では、モスクが建設されるなど、イスラム教への理解や関心が高まっています。一方、日本を見てみると、1980年代以降、海外旅行や留学を経験した人たちが持ち帰った海外の文化が日本文化と融合して新しい文化を生むという現象も見られます。
このように、海外旅行という一つのテーマだけでも、いろいろな社会の変化が見えてきます。つまりそれを学ぶことは社会学につながっているのです。
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