日本にある2つ目の言語「日本手話」を考える
「日本手話」は独自の言語
手話は、耳が聞こえない聾者(ろうしゃ)同士が用いる視覚言語です。手話は国によって異なり、音声言語の分布とも一致しません。そして日本には日本手話という、音声日本語とは違う統語構造をもつ1つの言語があります。聾者同士が用いる日本手話は、日本語を話しながらただ手話単語を表しただけのものではないのです。
文法の違いが考え方に影響
日本手話では手の形、位置、動き、向きの組み合わせで単語が作られます。それに加え、眉・あご・目の動きが文法を構成する大事な機能をはたします。手話をする聾者の表情には、感情表現とともに、文法の意味も含まれているのです。
また、日本手話は音声日本語と語順が異なります。日本語では文の途中に置かれる「なに」「どこ」などの疑問詞は、日本手話では文末に置かれます。この違いは、日本語と英語との違いが日本人とアメリカ人との考え方や価値観にも影響するように、聴者(聞こえる人)と聾者との考え方や価値観にも影響を及ぼします。日本語では述語が最後に来ますが、英語では結論を先に出します。そして日本人は結論を遠まわしにし、アメリカ人はストレートに伝える。このように、言語構造と文化的なふるまいは関連しあっています。同様に、日本手話は結論をはっきりと表現する言語構造になっており、それが聴者とは異なる聾者の価値観や独自の文化を生みだすのです。
手話通訳者になろう
2013年、障害の有無にかかわらず平等な生活をめざす障害者差別解消法が成立しました。弁護士や医師をめざして大学に進学する聾者も増えており、支援体制の整備が急ピッチで進められています。さらに総務省は2021年度から公共インフラとして聴者の音声と聾者の手話をオペレーター(通訳者)がつなぐ「電話リレーサービス」の開始をめざしています。手話通訳者はまだ不足していますが、これからの社会でますます必要とされる存在なのです。
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群馬大学 共同教育学部 特別支援教育講座 教授 金澤 貴之 先生
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