電磁波やオーロラから宇宙空間のプラズマを調べる
電子回路に悪影響を及ぼす放射線
地球の周りの宇宙には、プラズマが存在しています。プラズマは物質の第四の状態といわれ、分子が電子とイオンに分かれた状態であり、非常に高いエネルギーを持つと放射線になります。そのため、人工衛星に使われる電子回路も放射線により性能劣化や誤作動を起こす可能性があり、回路を金属のシールドで覆ったり、予備の回路を複数用意したりする対策を施さなければいけません。このような対策とともに、放射線がどのように生じるかの解明が進められています。
コーラス波動とフラッシュオーロラ
人工衛星に搭載した電磁波観測機により、宇宙空間で「コーラス」と呼ばれる特徴的な電磁波が観測されました。コーラス波動により宇宙に飛び交うプラズマは揺さぶられ、地球に降下します。アラスカでは数百ミリ秒しか発光しない「フラッシュオーロラ」が観測されており、降下した高エネルギーのプラズマが大気と反応したことがフラッシュオーロラを発光させている原因だと推測されました。
そこで宇宙空間の人工衛星とアラスカの地上とで、コーラス波動とオーロラを同時に観測してみると、コーラス波動が強まる時にオーロラが光ることが確認できました。波動が強くなってからオーロラが光るまでの時間差は100~200ミリ秒でした。オーロラを作る電子の速度と、コーラス波動が伝搬(でんぱん)する速度から、観測した時間差を満たす式を作ればプラズマの発生域までの距離が導き出せます。
磁力線をトレースする
プラズマは地球の磁力線に沿って地球に向けて降下しています。つまり、磁力線に沿って計算で得られた距離だけトレースすると、プラズマが来る宇宙の場所が推定できます。この場所を、波動粒子相互作用領域と呼んでいます。現在はこのエリアでどうしてプラズマが電磁波と共に瞬時的に変化するか十分に解明されていません。オーロラの明るさと高さの分析からプラズマのエネルギー量を推測するなど、謎を解明する研究が進められています。
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金沢大学 理工学域 電子情報通信学類 准教授 尾崎 光紀 先生
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