電気自動車の快適性、安全性を高めるインホイールモータ制御技術

電気自動車の快適性、安全性を高めるインホイールモータ制御技術

電気自動車への買い替えを推進するには

電気自動車の市販が始まっていますが、「環境にいい」「CO₂が発生しない」というだけではガソリン車から電気自動車に買い替える決心をさせるには決め手不足です。電気自動車を選んでもらうには、その特長を生かして、ガソリン車にはなかった利点を打ち出す必要があります。

電気自動車だから実現可能な快適性

現在の電気自動車は小型車が主です。小型車は路面の凹凸の影響や風の抵抗を受けやすいので、運転手はタイヤがぶれないようにハンドルをしっかり握りしめなければなりません。しかし、それでは快適性が劣ります。そこでモータ制御の力を使って、その問題を解決する研究が進められています。
それを実現するのが、タイヤ毎に一つずつモータを積むインホイールモータです。タイヤがぶれそうになったら、モータ制御でそれぞれのタイヤの動きに姿勢を戻すような動きをさせることで、運転手がハンドルで微妙にコントロールしなくても車はまっすぐに進みます。
また、初心者がブレーキを踏むと、止まる直前にしばしば前のめりになります。これはブレーキを最後まで一定に踏むからです。熟練運転手は止まる直前に少しブレーキを緩めます。この場合も、インホイールモータを制御して、ブレーキ力を調整すれば、前のめりにはなりません。

死亡事故も減らせる

滑りやすい路面や急にハンドルを切った場合に、車が横滑りすることがあります。この場合は、タイヤが滑りそうになった瞬間にコンピュータがそれを検知し、瞬時に左右のモータに制駆動力差をつけることにより姿勢を立て直すことができます。これもタイヤを一つずつ制御できるインホイールモータだから可能です。
自動車の死亡事故の4割は横滑り現象がかかわっています。インホイールモータなら、従来のブレーキではできないきめ細かい制御が可能なので、横滑りを防ぐことができ、死亡事故を減らせるでしょう。
このように、インホイールモータを使えば快適性や安全性が高まるので、次世代の電気自動車の技術として注目を浴びています。

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東京大学 大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 准教授 藤本 博志 先生

東京大学 大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 准教授 藤本 博志 先生

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電気工学

メッセージ

工学部をめざすなら、物理や数学を一生懸命に勉強しなくてはならないのはもちろんですが、意外に大事なのがコミュニケーション力です。物をつくるのは一人ではできないからです。さらに、体力と情熱、新しいことをやりたいという熱意が必要です。そして最も重要なのは、何事もあきらめないことです。新しい技術に問題が出るのは当たり前のことです。だからといって、元に戻るのでは科学は進歩しません。新しい技術から出てくる新しい問題を解決するのは、“さらに新しい技術”なのです。

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東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。