アニメやコードを駆使して日本語の教え方をアップデートする
アニメーションで教える助詞
あなたは、「海で泳ぐ」と「海を泳ぐ」の違いをどのように説明しますか。「で」と「を」という助詞の違いは日本語を母語とする人には簡単に認識できますが、英語や中国語などの、助詞が存在しない非日本語母語話者にその違いを説明することは簡単ではありません。これまでさまざまな教育・指導法が考えられてきましたが、アニメーションを用いた方法も有効です。「海で泳ぐ」はある限られた空間の中で人が泳ぐ映像を、「海を泳ぐ」はその空間から人がいなくなることを想起させる映像を学習者に示すことで、より理解がしやすくなります。
漢字の線にコードをつける
また、私たちが普段使っている漢字も、漢字を使わない言語を母語とする人たちにとっては習得が困難です。特に漢字を構成する一つ一つの「線」の見分けがつきにくいため、例えば初学者が「口」という漢字を書こうとすると、一筆書きで書いた図の「□」のようになってしまいます。そこで、漢字の各線に「コード」をつけるという手法が考案されました。漢字の線は、左から右に伸びる線、上から降りてきて曲がる線など、6種類に分類されます。この分類に沿って、それぞれの線にアルファベットのコードをつけることで、「Iの線のあとにHの線を……」といったように、線が区別できるようになり、漢字の認識がしやすくなります。
多様な学習者に対応する
このように、日本語を母語としない学習者に日本語を教える現場では、日本語ならではの特性を踏まえながら、より効率的に教えられる授業デザインや教材が求められています。学習者は、外国から留学や仕事に来る人だけでなく、国内にも日本語の支援が必要な児童生徒が5万人以上いるとされており、母語や個性といったバックグラウンドは実にさまざまです。それぞれの学習者に適した学習法や、より少ない負担で効率よく日本語が学べる選択肢を増やすこと、また日本語教師や学校の教員、ボランティアといった支援者の助けになるような知見を示すことこそ、日本語教育学の重要な役割なのです。
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先生情報 / 大学情報
拓殖大学 外国語学部 国際日本語学科 教授 中村 かおり 先生
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