数学によるデータ暗号化の仕組み
一瞬で計算する、すご技!
鉄道などで使えるICカードを改札でタッチすると、あっという間に精算されてゲートが開きます。この一瞬の間に改札から出ている電波を受信したICカード内で回路が起動し、データの送受信が行われています。ICカードのデータは暗号化されていますが、チャージされている金額の復号と使った金額の計算などをこのわずかな時間の間に行っているのです。
暗号解読には何兆年もかかる
暗号は解読されないようにしなければなりませんが、正しいユーザーにはすぐに解読できなければなりません。これを実現するために「トラップドア」と呼ばれる仕組みを使います。暗号の技術は離散(りさん)数学と呼ばれる分野の高度な知識に支えられています。代表的な暗号にRSA暗号があります。大きな素数pとqの積nに対し、逆にnから素因数分解をしてp、qを得ることがとても難しいということに、その安全性の根拠がある暗号です。例えば具体的に、pとqをそれぞれ2の1000乗程度の素数とすれば、それらの積であるnは2の2000乗もの大きさになります。これを素因数分解しようとすると、たくさんのコンピュータをつないで連携して計算をしても、とてつもない年月がかかることになります。一方で、素因数であるpとqを知っている正しいユーザーは、改札でのICカードのように瞬く間に暗号のための計算ができるようになっているのです。正しいユーザーかそうでないかによって、計算処理の時間がまったく違うのです。
数学がインターネット社会を支えている
RSA暗号のnの因数分解は数学でも難しい問題です。しかし、その基礎となっている数学は整数の四則演算と素数だけです。たったこれだけで、インターネット社会を支える重要なセキュリティ技術が作られているのです。いわば「素朴な数学」でも、社会を支える大きな柱になれるのです。
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