点と線から生まれる新しい幾何学の世界

差分幾何学とは?
微分・積分を使って曲線や曲面を研究する学問が「微分幾何学」です。これに対して「差分幾何学」は、差分(引き算)や和分(足し算)を使って、離散的な曲線や曲面を研究する分野です。滑らかな曲線や曲面の場合、図形の形は「曲率」という関数によって決まり、微分積分学がこの関係を支えています。しかし離散的な図形は微分積分と相性が悪く、従来の理論では扱いにくいものでした。差分幾何学は最初から「離散的図形」を研究対象として、曲率に相当する概念を見つけることで、これらの図形をうまく扱えるようにします。
連続的な図形の近似にあらず
離散的図形を扱うと言っても、連続な対象物を近似するのではなく、はじめから離散的図形を主役にして、連続的な図形は離散的図形の一つの極限の姿に過ぎないと考えます。離散化の観点からみた差分幾何学の特徴は、見た目の近似だけでなく、「曲率」のような数学的性質を離散の世界でも正確に保存することにあります。
差分幾何を考える動機は大きく二つあります。一つは離散モデルで考えると曲率などの概念が理解しやすいこと、もう一つは、欲しい図形を構成するためのツールとして有用なことです。パラパラ漫画のように、いくつかの点さえあれば、私たちの脳は自動的に連続した形を想像できます。同様に、離散的な情報があれば図形を構成できるのです。ただし、わずかな式の違いで結果が大きく変わることがあり、きれいな理論を作るのは容易ではありません。
コンピュータと相性が良い
差分幾何学は1970年頃に生まれ、現在はドイツのグループを中心に発展しています。離散的な表現はコンピュータとの相性が良く、複雑な計算も効率的に行えるため、さまざま分野で応用されています。例えば、建築分野では従来にない斬新な設計ソフトウェア環境の開発に生かされ、屋根の形状設計などに応用されています。また最近では「弾性棒」と呼ばれる、力を加えると曲がるけれど手を離すと元に戻る物体の差分幾何学的研究が進められ、CG分野との関係も模索されています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
