高齢者の転倒を防ぐためのリハビリとは
高齢者が転倒するメカニズム
高齢になると転倒しやすくなります。その原因は筋力の低下などのほか、感覚機能の衰えにもあると言われています。通常、人は立っているときには主に足首の感覚、視覚、それに三半規管の3つから得られる情報を脳で統合して体のバランスを保っています。歩行などで状況が変わると、体のバランスをとるためにそれらの感覚を切り替えなければなりません。高齢になると、それがうまくいかないのです。
バーチャル空間でバランス感覚を取り戻す
この状況を仮想的に再現する装置を開発しました。揺れている電車で立っている場合、指1本でも壁に触れると安定しますが、これと同じ状況を作ります。被験者には目隠しをして立ってもらい、手の指には加速度センサと振動機能があるデバイスを装着します。あたかも壁に触れているかのようにリズミカルに手を動かしてこのデバイスを振動させると「仮想壁」を感じることができます。目隠しをした高齢者の場合、急に仮想壁をOFFすると倒れそうになります。しかし、再び仮想壁をONにすると触れている感覚になり、安定状態に戻ります。身体動揺センサで体の傾きがわかるので、仮想壁のON・OFFの状態の時の動揺の差などを組み合わせて転倒リスクを算出できます。このデータから年齢別の適正値(立位年齢)を算出し、実年齢と比較することで、体のバランス感覚の衰えを判定できます。この装置は、繰り返し利用することでリハビリにも利用できます。
自分の運動能力を正しく認識する
リハビリでは、足首のトレーニングも行います。椅子に深く腰かけて足裏が床につくように座り、足先を上げて自分がどの程度上げているかを認識するトレーニングを行います。高齢になると、運動能力とそれを認識する力(自分ができる、できないと思うこと)がずれてくるので、この2つが合致するように修正していきます。また、高齢者は足首ではなく股関節でバランスを保とうとするため、それが転倒リスクを高めます。足首のトレーニングをすることで、足首が使える状態に戻すのです。
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先生情報 / 大学情報
県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 理学療法学コース 教授 島谷 康司 先生
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