運動だけじゃない! 栄養が高める筋肉のポテンシャル

運動だけじゃない! 栄養が高める筋肉のポテンシャル

筋肉の新たな役割:健康増進のカギとなる分泌機能

筋肉は単に体を動かすだけでなく、私たちの健康を支える重要な役割を果たしています。筋肉から分泌される「マイオカイン」という物質は、筋肉だけでなく血流に乗って全身の臓器にも良い影響を与えます。例えば、骨粗鬆症や認知症の予防、がんを抑制するマイオカインがあることが明らかになっています。運動によって筋肉を収縮させることで、これらの健康効果が得られますが、病気やケガで運動が難しい人もいます。そこで、電気刺激や栄養サポートで筋肉を活性化し、健康を取り戻すための研究が行われています。将来的には、エクササイズピル(運動模倣薬)など、運動と同じような効果を薬で再現することが期待されています。

物理的アプローチで筋肉ケア

運動ができない状況でも、筋肉を活性化させるための物理的アプローチがあります。代表的な方法の一つが電気刺激療法です。電気刺激の設定を変えることで、持久運動(ランニングなど)やレジスタンス運動(スクワットなど)の効果をそれぞれ引き出せます。これにより、筋から分泌されるマイオカインの種類も変わります。このように、物理的アプローチを利用することで、運動と同じような健康効果を得られます。

筋肉ケアの効果を高める栄養サポートの秘訣

栄養は筋肉のポテンシャルを引き出す重要な要素です。がんや糖尿病などの病気では、全身的な炎症により筋肉内の血管がダメージを受けて筋肉が細くなります。この状態の筋肉に運動や電気刺激をしても、炎症が悪化し、治療の効果が得られにくいです。炎症を抑え、筋肉の健康を保つためには、抗酸化栄養素や抗炎症栄養素の摂取が重要です。特定の栄養素が血管のダメージを防ぎ、筋肉の回復を高めることも分かっています。また、栄養サポートを併用した電気刺激は、筋肉の健康効果をさらに高めることが確認されています。研究が進むことで、適切な栄養サポートによる筋肉ケアがマイオカイン分泌を促し、幅広い病気の予防や治療に役立つ可能性があります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 理学療法学コース 講師 金指 美帆 先生

県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 理学療法学コース 講師 金指 美帆 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

理学療法学、栄養学、運動生理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校時代に進路を決めるのは難しいものです。いつどのようにして興味のある学問や職業に出会うかは予測できません。しかし、さまざまな経験を積み重ね、小さな選択を繰り返すことで、追求したい学問にたどり着けるかもしれません。また、私が取り組んでいる理学療法には、臨床だけでなく、学問として極める道があるということもぜひ知ってほしいです。骨格筋(筋肉)の研究は、健康増進に直結し、人々や社会に分かりやすく貢献できます。また、身近な人や自身の健康にも役立つ魅力的な学問ですので、ぜひ一緒に新しい発見を求めましょう。

先生への質問

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県立広島大学は、教育、研究、地域貢献、国際交流のいずれにおいても公立大学として一級の大学になっています。「主体的に考え、行動し、地域社会で活躍できる実践力のある人材の育成」を目標に、教養教育では、大学4年間の学士課程教育を通じて実施する「全学共通教育科目」を設定するとともに、専門教育においては、教養教育との連携を図りながら、「専門科目」を系統的に設定することにより、バランスのとれた教育内容を提供していきます。