侮るなかれ!「河川津波」は速くて強い

侮るなかれ!「河川津波」は速くて強い

陸よりも速く遠くへ伝わる河川津波

東日本大震災では河川を遡ってきた「河川津波」によっても、大きな被害を受けました。宮城県の北上川では、河口から49キロ上流まで遡上(そじょう)し、そのうち12キロまでが被害を受けました。そのほか、東北地方の多くの川を河川津波が遡上し、周辺の道路や田畑、住宅などを一気に飲み込みました。河川津波は、陸上の津波よりも速度が速く、弱まりにくいという性質があることや、地形によっては海とは反対側から襲ってくることもあり、注意する必要がありますが、その危険性はあまり意識されていません。

簡単にはいかない河川津波の研究

河川の湾曲部では遡上してきた津波が直進しようとするため、堤防に衝突してあふれたり堤防を破壊したりすることがあります。また、橋脚や堤防など河川の構造物は、上流から下流へ流れることを前提に造られているため、下からの流れには弱いことが多く、橋脚の基礎や護岸が洗堀をうけて破壊するケースもあります。このような、河川を遡上する津波に関する研究が進められています。しかし、実験室内で流れがある水路に津波を起こすことは容易ではなく、河川津波に関する実験的な研究はあまり進んでいません。またコンピュータを用いた数値シミュレーションでは、調整に用いる実験データが少ないのに対して、考慮すべき条件が煩雑なため精度の高い計算をするのは難しいのです。

自然環境と共存する洪水に強い河川とは

日本の河川の多くは、洪水被害を防ぐために護岸工事がなされ、コンクリートで固められています。洪水を防ぐためには仕方のないことですが、そこに繁茂していた植物をすべて伐採してしまうのは、景観面でも環境面でも残念なことです。川の中の樹木は障害物となって水の流れを遅くする働きがあります。これは速く洪水を流すためにはマイナスですが、流れによる護岸の洗堀を防ぐためにはプラスになります。そこで、樹木やそこに生息する生き物などの自然豊かな環境と共存できる洪水にも強い河川のあり方についても研究が進められています。

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東北工業大学 工学部 都市マネジメント学科 准教授 菅原 景一 先生

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簡単に答えを求めるのはやめましょう。世の中、わからないことの方が多いし、学校の勉強でもなんでも自分で苦労して答えを見つけた時ほどうれしいものはありません。ショートカットして答えに近づこうとしても、本当の答えにはたどり着けません。そして、一見無駄な苦労をしているように思える時に、力がついているものです。
自然と人工物の共存を考えていく土木工学は、人間の力ではどうにもならない自然が相手なので、すぐに答えは出ませんが、その分やりがいもあります。ぜひ一緒に学びましょう。

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