環境と経済の効率性を数値化する
環境問題は企業活動の大きな鍵
地球温暖化やCO₂削減、自然環境保護など、いま環境問題は経済と密接に関わりあっています。環境保全を目的に、車や電気の使用によるエネルギー消費量や、それによって発生する二酸化炭素量などの環境負荷に対し環境税の導入も進んでいます。そのため企業や団体は、環境規制をクリアしつつ、利潤をあげていかなければなりません。「環境経済学」は、そうした環境分野における問題を経済学の観点から分析する学問です。
負の外部性が生む影響
企業の生産活動によって環境負荷が排出されると、市民の健康に影響する場合があります。つまり企業の利益のために市民という第三者が犠牲になります。これを生産における負の外部性と呼びます。環境経済学では、市場経済の仕組みに負の外部性が加わった時に、市場にどんな影響が出るのかを分析・評価し、環境と経済活動のバランスをとりながら効率性を高めるための方策を探ります。
企業側の効率だけを求めると、むちゃな人件費削減や品質低下につながり、環境負荷の垂れ流しという事態にもなりかねません。必要なのは、環境負荷を極力少なく、労働環境も守りながら生産効率を高めることです。
包括的な効率性の分析
企業の生産活動では、売上という望ましいアウトプットを生むために、人件費や設備費などの多様な要素が投入されます。一方で、その生産活動に付随してCO₂などの負のアウトプットも排出されます。このような、複数の投入産出要素を同時に考慮して経済主体の効率性を評価する手法としてDEA(データ包絡分析法)があります。DEAでは、効率的な生産活動を行っている経済主体を特定し、それらを結んだ「フロンティア」という曲線を基準に効率性を評価します。つまり、トップランナーに焦点を当てるのです。DEAを用いると、包括的な効率性が測定可能なだけでなく、効率性改善のためにどの投入産出要素をどれだけ改善すべきかという数値目標が明確になり、どのトップランナーを参考にすべきかなどの情報も提供することができます。
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先生情報 / 大学情報
福岡大学 経済学部 産業経済学科 准教授 江口 昌伍 先生
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