赤ちゃんに学べ! AIを超える「柔らかなAI」とは?
AIには教師データが必要
従来のコンピュータは与えられたプログラムの範囲内で正確に動作しますが、AI(人工知能)を備えたコンピュータは自らデータを学習して適切な動作を選択します。しかし裏を返せば、コンピュータはデータがなければ判断できません。一方、人間は生まれて1年程度で自然と言葉を覚え始めます。周囲の人が教える以外にも自然に多くの語彙を覚え、成人する頃には平均でも約20万語の単語を習得すると言われています。赤ちゃんが言葉を覚える仕組みをAIに応用すれば、データがなくても学習する「柔らかなAI」ができると考えられます。
赤ちゃんの能力を知る
赤ちゃんが言葉を覚える仕組みは解明されていません。赤ちゃんは自らを語れないので、観察するしかありません。そんな赤ちゃんを対象とした研究では、特有の飽きっぽい性格を利用します。例えば、生後2~3カ月ほどで図形の丸と三角の区別がつき始めます。画面にずっと丸を映しておくと、始めのうちは見ていますが、次第に飽きて目をそらします。その時、画面を三角に切り変えると、区別がつく赤ちゃんは再び画面を見ますが、区別がつかない赤ちゃんは変化に気づきません。これは音にも応用できます。日本人の成人はLとRの発音の差が聞き取りにくい人がほとんどですが、0歳頃は特定の言語を習得する前なので、LとRを聞き分けることができます。これはLで始まる「ライス(lice)」を続けて聞かせた後、Rで始まる「ライス(rice)」を聞かせると振り向くなどの反応でわかります。
AIを超えたAIをめざす
今のロボットは大量のデータ学習が必要なので、家に連れてきたら、家族の顔を見せて「これはお父さん」などと教えなければ覚えません。しかし、赤ちゃんのように柔軟に学習できるシステムが備わったロボットであれば、2~3日置いておくだけで自然と家族構成が判断できるようになるでしょう。
かつてはロボット大国といわれた日本で、今のAIを超えた次世代の「柔らかなAI」が研究され始めています。
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玉川大学 工学部 情報通信工学科 教授 岡田 浩之 先生
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