電波は、どのように伝わるか?

電波は、どのように伝わるか?

ケータイと引越しは、よく似ている

ケータイにおける電波の役割は、飛行機を使った引越しとよく似ています。A地点で発した荷物ならぬ「声」を、電波に変換してB地点まで運ぶのが通信の技術です。
引越しでは、例えばタンスを送る場合、そのまま送るか、パーツに分解して送るかを考えます。タンスをそのままの状態で送るのは通信で言えばアナログ伝送で、欠点は壊れやすく、大きくてかさばることです。一方、パーツに分解してコンパクトにし、同じような大きさ・形のものをまとめて梱包するのがデジタル化に対応します。
梱包ができれば、次は飛行機に乗せますが、うまく飛び立つためには空港が必要です。電波の空港はアンテナです。遠くに飛ぶように、ちょうどよい大きさや形を考えて設計しなければなりません。こうして無事に飛び立ったら、今度は着陸するための空港・受信用アンテナに降り立ちます。そして無事空港に着いたら、今度は梱包から出してバラバラになったパーツを元の状態に組み立てます。こうしてB地点相手の声が聞こえるのです。

遠くに飛ばすには波長の長い電波が必要

このように通信に使われる電波は、振動する「電界」と「磁界」によってできています。電界と磁界は相互に作用しあって、電波となって飛んでいきます。その振動の速さを周波数と言います。速く振動する周波数の高い電波は、波長が短く、近くまでしか届きません。一方、振動が遅く、周波数の低い電波は波長が長く、遠くまで飛んでいきます。人間にたとえると、波長は歩幅です。同じ100歩でも歩幅の大きい方が遠くまで行くことができます。
ちなみに、AMラジオ放送の周波数は1メガヘルツ前後、波長で言えば約300mです。テレビ(地上アナログ放送)の1チャンネルはおよそ100メガヘルツ、波長は3mです。つまり、同じ送信電力ならば、AMラジオの電波の方が遠くまで飛べるわけです。最近では波長の短い電波も開発されており、ミリ波というミリ単位の波長をもつものが登場しています。

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名古屋工業大学 工学部 電気・機械工学科 電気・電子分野 教授 菊間 信良 先生

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通信系/電波応用系

メッセージ

電気、電波は目に見えないので、普段は存在を意識しませんが、それらを使っているパソコン、ケータイ、テレビなどは日常生活に浸透しており、なくなると非常に困ります。電気、電波はいわば空気のような存在です。特に電波を利用するケータイの技術革新のスピードは速く、行きつくところまで来た感があります。もう革新的な技術の進歩はないかとも思いますが、若い人たちの新しい発想で、もっと用途が広がるかもしれません。電波を使って、暮らしを豊かにする新しい技術を一緒に考えましょう。

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名古屋工業大学は、世界のものづくりの中心地である中京地区の工学リーダーとして、技術イノベーションと産業振興を牽引するにふさわしい高度で充実した教育研究体制を整備しています。さらに国内の工科系大学のみならず、世界の工科系大学と連携することにより、工科大学の世界拠点として、異分野との融合による新たな科学技術を創成し、有為の人材を数多く世に送り出そうとする構想をもっています。