レーザで「創る」金属部品の未来! 表面改質と3Dプリンタ

レーザで「創る」金属部品の未来! 表面改質と3Dプリンタ

金属加工に欠かせないレーザ技術

「レーザ」は光の一種ですが、広がらずに一直線に進み、目標にピンポイントで照射できる特徴を持っています。中でもエネルギー密度の高いレーザは、その熱で溶かして切断するなど、金属加工に欠かせません。このレーザによる金属加工が、今、次世代に向けて進化しています。

骨と金属との接合を促進させる技術

その一つが、レーザによる「表面改質」です。レーザ照射によって金属の表面を微細に加工し、様々な機能を持たせることができる技術です。中でも、人工関節や歯科インプラントなどの金属部品への表面改質が注目されています。
例えば歯科インプラントでは、あごの骨に穴を開けて、チタン合金製のネジ(人工歯根)を差し込んで人工の歯を取り付けますが、骨が回復・成長してネジとの隙間が埋まるまで数カ月かかります。そこで、ネジに「グリセロリン酸カルシウム水溶液」を吹き付けながらレーザを照射して表面を溶かし、リン(P)とカルシウム(Ca)を取り込んだ層を創成したところ、骨芽細胞の増殖が促進されることがわかりました。歯によって異なる形状でも、精密に加工できるのがレーザの優れた点です。

複雑な形を金属でつくる

また、レーザによる「金属3Dプリンタ」もいくつかの種類が開発されています。その一つが、金属の粉末をレーザで溶かしながら積み上げて形をつくる「粉末床溶融結合法」です。50μmの厚さに金属粉末を敷き詰めて、レーザで求める形状を描いて溶かし固め、その上に新たに粉末を50μm敷き詰めて、という工程を繰り返します。切る・削る加工などの従来技術では難しい複雑形状でも、金属3Dプリンタなら、断面データをもとにレーザで形を描くことで自由に造形できます。
金属3Dプリンタで製作した部品を自動車や航空機に使用できるようにするため、それに見合うよう強度や品質を高める研究が続いています。造形の自由度が高く、少量生産も可能で、無駄な端材を出さないなどメリットは多く、これが普及すれば、製造業の未来を変える可能性もあります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

三条市立大学 工学部 技術・経営工学科 准教授 江面 篤志 先生

三条市立大学 工学部 技術・経営工学科 准教授 江面 篤志 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

機械工学、材料工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

夢を持ってください。5年後、10年後にどうなっていたいかを考えて、そこから逆算すれば今日何をすべきかわかり、意欲を持って取り組めます。周りから「もっと現実的になれ」と言われるような夢でも、今日できることをやって実績を積み重ねて行ったら、周りの応援も得られるようになるでしょう。今は夢がなくても、大学に入っていろいろ新しいことにチャレンジしながら探してください。大学では、研究活動など自ら動かなければならない機会も多く、これを生かせば何かを実現するスキルが身につけられます。

三条市立大学に関心を持ったあなたは

三条市立大学は、2021年4月に開学した新しい大学です。多様な加工技術が集積するこの地域全体をキャンパスとし、機械工学を軸として多岐にわたる分野の学問を組み合わせた学修と、実践的な技術感覚を養う産学連携実習を特長としています。多様な工学技術についての深い知識に加えて、経験をもとにした創造性や実践力があり、技術と経営を効率的に組み合わせる技術マネジメント力を有する「創造性豊かなテクノロジスト」を育成します。