環境に優しい農法のヒントは江戸時代にあり!
環境への負荷が大きい近代農業
化石燃料で動くトラクターで耕し、化学肥料や農薬を大量に用いる近代的な農法は環境への負荷が大きく、パーム油などはオランウータンが暮らす熱帯雨林を焼き払って作られています。ですから、農業のあり方を変えることで、地球環境問題の解決に貢献できると考えられます。
江戸時代の農書をヒントに
農業のあり方を変えるヒントを探すには、過去にさかのぼる必要があります。近代農業を支える最新技術は検証期間が短く、環境に与える長期的な影響には不明な点が残されています。それに比べ、江戸時代から続く農法は何百年も継承され、環境と共存する知恵や技術を備えています。例えば、近代農法は同じ畑に同じ作物を作り続け、連作障害を招いてしまいます。より多くの収量を効率的に生産することが求められるからです。他方、江戸時代に記された『会津農書』には、麦類と豆類を交互に作付け、土への負担を軽くする方法が記されています。マメ科の作物は空気中の窒素を固定し、禾本科の麦は土壌を清浄にするため、互いに助け合うことで連作障害を防いでくれるのです。近代農業と比べ作業効率や短期的な収益性では劣る江戸時代の農法は、長い目で見れば生態系や自然環境を保全する持続可能な農法だといえるのです。
農業に求められるマネジメント能力
農業の持続可能性を実現するためには、農法の改善も大切ですが、担い手の確保も必要です。日本の農業就業人口は若者を中心に減少しています。しかし、家族経営が主流だった農業にも法人が参入し、担い手不足を解消しています。それらの農業法人は、若者のニーズを把握し、働き方を改善するマネジメントに取り組んでいます。当然のことですが、働く人の意見を尊重して休暇を確保し、十分な給料を保証している農業法人では、若者が定着しています。適正な収益を上げて人材不足を解消し、ゆとりのある労働環境をつくることも、環境にやさしい農業の未来を創造する効果的な手段といえます。
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東北文化学園大学 経営法学部 経営法学科 教授 秡川 信弘 先生
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