国同士のコミュニケーションを保つ国際法
日常生活での国際法のメリット
国際法と言われても身近に感じられないかもしれませんが、実は私たちの暮らしと深い関わりがあります。例えば、スーパーに行って海外産の生鮮食品を季節に関係なく手頃な値段で購入できるのは、世界貿易機関(WTO)協定に基づく貿易ルールが定められているからです。世界遺産を楽しめるのは世界遺産条約に基づき各国が管理しているからで、最短で目的地に行けるのもシカゴ条約に基づく国際民間航空機関(ICAO)が航空機の運行ルールを定めているからです。このように国際法は、生活に多くのメリットをもたらします。
国際法と国内法の違い
国際法を守らなかった場合はどうなるのでしょうか。国内法であれば、ルールを破った場合の罰則や裁判所での解決などが細かく定められています。しかし、国際法では違反に対して必ずしも罰則が用意されているわけではありません。もちろん、ルールを破った国を国際司法裁判所などに訴えることはできますが、裁判所が事件を扱うためには各国の同意が必要になります。
国際法が国内法と内容的に相容れない場合、国際社会では基本的に国際法が優先されますが、例外もあります。例えば、日米安全保障条約では敵から攻撃を受けた場合の相互協力・援助が定められていますが、日本は戦争放棄を定めた憲法9条の範囲内の対応に限られます。国際法の目的は、国同士が国際法を通して友好的なコミュニケーションを保つことで、国際社会の秩序を維持することにあるのです。
国際法のデメリット
国際法にはメリットがある一方で、デメリットもあります。そのひとつが政治の影響です。例えば、中国の反対によって、台湾はICAOや世界保健機関(WHO)から除外されています。また、チョコレートの原料であるカカオの産地では、収穫のために児童が働いています。自由な貿易でチョコレートが流通するほど、児童労働を助長してしまいます。時代や環境の変化で、国際法が古くなることもあります。よりよい国際関係をめざして、国際法も改善していく必要があるのです。
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西南学院大学 法学部 国際関係法学科 教授 根岸 陽太 先生
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