少数派を尊重すべきか多数派を重視すべきか―インドの例から考える

少数派を尊重すべきか多数派を重視すべきか―インドの例から考える

マイノリティを尊重したインドの政治

外交や経済などの面で近年注目されている国・インドは、中国に次ぐ世界第2位の人口、約14億人を有する民主主義国家です。1990年代に経済を自由化し、その後は経済成長を続けています。またインドは、ヒンドゥー教徒が約80%、イスラム教徒が約14%を占める多宗教国家です。インドでは長い間、イスラム教徒のようなマイノリティ(少数派)に配慮する政治が行われてきました。イギリスからの独立時に激しい宗教対立があったという経緯から、宗教による価値観の違いを尊重する政治が行われ、それは国際的にも高く評価されてきました。

少数派を尊重すべきか多数派を重視すべきか

しかし、最近のインドでは、ヒンドゥー教を重視する政策、すなわちマジョリティ(多数派)を重視する政策が強まる傾向にあります。そのため、少数派であるイスラム教徒などにとっては生きにくい環境となってしまっています。インドにおける多数派重視の傾向は、トランプ前大統領のもとでの「アメリカ・ファースト」政策や、イギリスのEUからの離脱といった、世界における流れとも軌を一にしているかもしれません。
あなたは少数派の考えを尊重する政策と、多数派の考えを重視する政策、どちらが正しいと思いますか? 実は、この問いに明確な答えを与えるのは簡単なことではありません。少数派を尊重してほしいという主張と、多数派を重視してほしいという主張、どちらにも等しく「正義」があるように思われるからです。

さまざまな「正義」

ほかの国々のことを知ると、宗教などさまざまな立場の違いによって、それぞれが大切にしている「正義」もまた異なるのだということがわかります。人々が置かれている環境や状況によって、考え方は大きく異なるのです。SDGsの目標のひとつに多様性の実現がありますが、人々が置かれている環境や状況の違い、それによる考え方の違いなどが分かっていないと、場合によっては、SDGsが価値観の押し付けになってしまうこともあるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

帝京大学 法学部 政治学科 准教授 三輪 博樹 先生

帝京大学 法学部 政治学科 准教授 三輪 博樹 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

法学、政治学

メッセージ

ほかの国々のことを学ぶためには、好奇心が旺盛なことがもっとも大切です。語学力のあるなしは関係ありません。外国に行くと、国や宗教によってそれぞれ異なった考え方があるということを知るでしょう。日本で暮らす私たちには考えられないことが起きたりもします。ですが、それらを否定することも、無理して受け入れることも必要ありません。「そういうもんだ」と思って気にしないこと、それこそが多様性への第一歩です。学校生活の中で嫌な人や苦手な人がいても、そういう人がいることを知ったうえで、気にしすぎないことが一番です。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

帝京大学に関心を持ったあなたは

医療系・文系・理系と幅広い分野の10学部32学科を擁する総合大学です。文系学部を中心とした八王子キャンパスでは、約15,000人の学生が学んでいます。東京多摩丘陵の自然豊かな景観に位置し、キャンパスリニューアルにより新校舎棟「SORATIO SQUARE(ソラティオスクエア)」「帝京大学総合博物館」をはじめとした、施設・設備が整備され、教育指針である「実学」「国際性」「開放性」を柱に、自ら未来を切り拓く人材を育成しています。