企業に利益をもたらす、ダイナミックプライシングとは?
価格は常に単一か?
商品やサービスには適正な価格が付けられますが、同じ商品でも状況に応じて違う価格を設定することがあります。例えば、航空券は同じ区間でありながら、利用者が集中する年末などの期間は価格が割高になり、あるいは早く購入すれば割安になります。このような需要と供給の状況に合わせて細かく変動させる価格戦略を「ダイナミックプライシング」といいます。
満席でも最大の利益ではない
あるスタジアムでのスポーツ観戦が、休日は満席で、平日は席が埋まらないとします。顧客情報を調べてみると、初めて来場する客はグッズ購入や飲食などに多く出費する一方で、リピーターは出費を控える傾向にあります。また、初めて来場する客は直前になってチケットを購入するのに対し、リピーターは早くからチケットを確保しているため、人気の週末はリピーターで占められていることもわかりました。つまり、満席だとしてもリピーターばかりでは売り上げが最高に達するとは言えないのです。そのため、平日に割安な料金を設定することで、曜日にこだわらないリピーターを平日に引き入れることができます。休日は割高な料金設定にしても、出費が高い傾向にある初めての来場者を取り込むことができるでしょう。ダイナミックプライシングは、このような価格のコントロールを通じて、企業に最終的な利益の増加を導きます。
顧客データ取得の秘密
このような席の空き状況や利用実績などに柔軟に対応するには、顧客の細かなデータ分析が不可欠です。正確な顧客データを取得する手段の一つに、買い物をするときに登録するとポイントが貯められるポイントカードアプリがあります。これにより、買い物をするごとに、どこの店でいくら使ったかといったデータが蓄積されていきます。企業はポイント割引という多少の不利益はあるものの、顧客の囲い込みと、顧客データの取得ができるわけです。こうして得られたデータを裏付けとして、今後はさらに多くの業種でダイナミックプライシングの活用が見込まれています。
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先生情報 / 大学情報
専修大学 経営学部 経営学科 教授 青木 章通 先生
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