市民が誇りを持って取り組む「地域演劇」
時代によって変わる演劇
演劇は時代によって変化してきました。現在は、戯曲と呼ばれるセリフを主としたジャンルだけでなく、ダンスやサーカス、オリンピックの開会式のようなセレモニーも「パフォーマンス」という文脈で演劇研究の対象となっています。
紀元前5世紀のギリシャでは、演劇は祭礼の一部でした。演劇は英語でシアター(Theatre)と呼ばれます。これはギリシャの劇場の観客席テアトロン(Theatron)が語源です。つまり、演じる人だけではなく観客もまた重要な存在であることが示されています。
その形式や内容はさまざまですが、どの時代においても、ひとつの場所に集まり、「見る―見られる」の関係で成立します。
民主化運動の中から生まれた地域演劇
演劇を専門に演じるプロは、昔から存在していました。その一方、収益が目的でなく、地域で劇団を作って地元のために活動している人たちがいます。地域に根差した演劇活動は、日本全国で行われています。例えば、東北・岩手県の地域劇団「ぶどう座」は、第2次世界大戦後の民主化運動の中から生まれました。現在も形を変えながら続けられていて、地元の人たちにとってかけがえのない存在となっています。
地域の人々が楽しむ場を作る
ぶどう座のメンバーは、仕事後の夜や休日に練習をしています。顔見知りの観客は、実際の姿と演じるときのギャップを楽しんで観劇します。題材は、岩手出身の作家の作品や、その土地に伝わる昔話など、地域に関わる作品を多く取り上げています。また、台詞を方言で話したり、農作業などで培った身体性を生かした演出が特徴です。近年の地域演劇は、市民ミュージカルや高齢者を中心に行われるシニア演劇などにも広がりを見せています。演劇が生活になくてはならない時間になっている人たちもたくさんいるのです。
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先生情報 / 大学情報
福岡女学院大学 人文学部 言語芸術学科 講師 須川 渡 先生
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