広大な畑から病気の株を見つけるには? 農家を支援する研究
作物を脅かす厄介な病気
サツマイモは「基腐(もとぐされ)病」という病気で腐ることがあります。原因となる菌の胞子は水の中を動き回ることができるため、水たまりを伝って離れた株にうつることも珍しくありません。特に短時間の強雨などで水たまりができた畑では、病原菌が繁殖するおそれがあります。病気を防ぐには、基腐病になっている株を早期に発見することが大切です。病気が広がる前に株を取り除いたり薬をまいたりすれば、被害を最小限に抑えることができます。
ドローンで病気を発見
ただし、人間の目で広い畑を隅々まで正確に観察し、どこに病気の株があるのかを見つけることは困難です。そこでドローンで上空から畑を撮影し、作物の状態を瞬時に観察する技術が開発されています。ドローンに近赤外域を撮影できるマルチバンドカメラや表面温度を測定するサーマルカメラを組み込んで、株の表面温度を調べる技術です。
基腐病になったサツマイモは葉緑素が減って、光合成を活発に行うことができません。すると葉の裏から放出される蒸気が少なくなります。一方で健康なサツマイモは光合成が活発なため、水が蒸発するときの気化熱によって葉の表面温度が下がります。この特徴を利用して表面温度が高い株をドローンで見つければ、病気の早期発見に役立ちます。病気を検出する精度を高めるために、データ収集や分析などが進行中です。
農家の安定した栽培を支える研究
近年は気象の変動が激しく、ベテラン農家の経験が通用しないケースが多くなってきました。急激な気候変動が起きるたびに作物が全滅してしまっては、農家の生活が成り立ちません。そこでドローンのほかにも気象データやリモートセンシング(モノを触らずに調べる技術)を利用して生育状況を観察したり、収穫量を予測したりする研究が行われています。こうした農業は、「スマート農業」と呼ばれ、研究が進むことで、作物の被害を最小限に抑え、農家への支援ができるはずです。安定した栽培が可能になれば、農業に新規参入するハードルも下がると期待されています。
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先生情報 / 大学情報
鹿児島大学 農学部 農学科 植物資源科学プログラム 環境情報システム学 准教授 神田 英司 先生
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