地域のありようを、地理の視点から読み解く
茅葺屋根の民家を守り続ける
福島県に大内宿(おおうちじゅく)という地域があります。江戸時代からの歴史ある宿場町で、昔ながらの茅葺屋根の民家が立ち並ぶ歴史的な姿を今に残しています。
歴史的街並みの保全は、簡単ではありません。昔ながらの民家の内部は、現代的な暮らしにはそぐわないことも多々あります。建物が文化財として指定されれば、価値を維持するための補助金を受け取れる一方で、自分の家であるにもかかわらず自由に改変ができないなどの規制を受け入れなければなりません。
大内宿の人たちはそういった規制を受け入れて、家を「売らない・貸さない・壊さない」という住民憲章を作り、茅葺屋根の住宅の維持や継承に努めています。中には、いったん屋根をトタンに変えながらも、また茅葺屋根に戻した人すらいます。
歴史的建築物の保全に地理的要因
歴史的街並みの保全に取り組む地域は、大内宿だけではありません。そして歴史的街並み保全の取り組み方は、地域により異なります。大内宿のように地域内の住民が主体となる方法だけではなく、地域外の資本や団体の協力を受ける方法もあるでしょう。どの方法をとるかは、地域の歴史や文化、住民の気質などで決まります。同時に無視できないのが、地形や気候などの地理的要因の影響です。
「地理」の視点から見つめ直すと
地域の成り立ちを考えるときに、地形は重要な要素のひとつです。住みにくい場所には当然人は集まりません。そこに人が定住して集落ができた理由は、地形から読み解けるのです。そして、どのような産業や文化が生まれたかもまた、地形から読み解けます。
地域の歴史や文化を考えるときは、まず歴史的な視点から考えることが多いでしょう。しかし、地理もまた、重要な視点のひとつです。実際に地域を歩き、地形を確認し、人の話を聞くなどのフィールドワークを重ねて、そこから歴史や文化を考える学際的な学問が、人文地理学という学問です。
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