割引クーポン、いつ使う? 行動経済学で意思決定をひも解く

旅行計画の裏にある心理とは?
「観光する人」の行動は、従来の経済モデルでは説明できないことがわかっています。従来のモデルでは、人間は常に合理的な判断を下すと仮定されていましたが、「観光する人」についてはその仮定は成り立たないからです。その理由は、その意思決定の複雑さにあります。例えば旅行先を決める際、私たちは目的地だけでなく、交通手段、同伴者、予算など、多くの要素を同時に考慮します。これらの要素は互いに影響し合って複雑な意思決定プロセスを形成しますが、これを説明するには、経済学に心理学を採り入れた「行動経済学」が必要になります。そこで、私たちが旅行を計画する際にどのような要因が影響しているのか、なぜ必ずしも合理的な選択をしないのかを、行動経済学を使ってモデル化する研究が進められています。
恋人と食事をするときは
このような研究の一環として、大学生を対象として、食事をする際に割引クーポンを使うことに対する印象に関するアンケート調査が行われました。その結果、同伴者との関係が大きく影響することがわかりました。恋人と一緒に食事をするときは、家族や友人と一緒の場合と比べ、割引クーポンを使うことに対してネガティブな印象を持つ人が多かったのです。また、幅広い年齢層を対象に行った調査からは、同じ収入層の人々の行動が、個人の旅行決定に最も大きな影響を与えることも明らかになりました。このように、観光における私たちの意思決定には、経済合理性以外の要素が大きく影響している場合があるのです。
脳科学との融合で新たな展開へ
経済学に心理学を採り入れた行動経済学に、脳科学を融合させることも検討されています。「観光する人」の意思決定プロセスを脳の活動レベルで分析することで、その根本的なメカニズムが解明されるかもしれません。また、この研究は、例えば環境に配慮した観光行動の促進や、効果的な観光政策の立案など、環境問題や政策立案といった幅広い分野への応用が期待されています。
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