感染防止のための休校措置という「リスクマネジメント」
リスクマネジメントとは
リスクとは、将来好ましくないことが起きる可能性のことを言います。そして、その影響の度合いを管理することを「リスクマネジメント」と呼びます。リスクを避けるには、それ相応のコスト(代償)が必要です。リスクの大きさとコストのバランスをどう取るかを考えることが、経済学の視点です。
リスク回避と代償のバランス
新型コロナウイルス感染症の流行に際しては、感染拡大を抑えるため、全国的に学校が長期の臨時休校になりました。休校により感染拡大というリスクはある程度抑えることができたかもしれませんが、勉強への影響や友人と会えないなど代償をともなっています。もしも、リスクを軽く考えて休校措置をとらなければ、代償は少なく済みますが、感染は広がっていた可能性もあります。目的を達成して何かを得るには、何かを捨てなければならないというトレード・オフの視点で考えることが必要です。休校というリスクマネジメントが結果としてどうだったかを正しく評価することで、次の手を打つことができるのです。
実務的な領域を考える金融論
血液の流れが良くなれば体温が上がるように、お金の流れが良い時は経済が活性化します。このとき心臓の役割をしているのが、銀行や保険会社、証券会社などの金融機関です。経済全体の資金の流れを良くするためには、金融機関も将来起こり得るリスクを想定し、損失を低減する対策を考える必要があります。将来の経済の見通しが悪くなると、企業の業績が伸び悩むことから株価は下落し、経済は悪い方に傾いていきます。いかに下落を止めるかということが、政策上では重要となり、それを考えるのがリスクマネジメントの目的です。費用対効果を考えながらリスクをどこまで抱えるかの判断を下すには、リスクを数値化し、統計的に解析することが必要になります。
リスクマネジメント論・金融論は、経済学の中でもより実務的な領域に近い学問です。身近に起きたできごとが経済・生活にどんな影響を及ぼすかを、データを解き明かしながら考えていくのです。
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先生情報 / 大学情報
武蔵大学 経済学部 金融学科 教授 茶野 努 先生
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