伴侶動物の予防医学に人の病気の研究を役立てよう
化学物質は善悪で割り切れない
化学物質は、ヒトの健康によい作用と悪い作用を持っています。普段食べている食品・栄養素や、何気なく使っている日用品も化学物質の塊ですから、人間に害がないかどうかを検証する必要がありますし、良い効果を引き出し、病気の診断・予防・治療に使えないかという研究もされています。しかし、生き物の体や化学物質の作用はそう簡単に「良い」「悪い」で割り切れるほど単純でなく、使い方によっては狙いと逆の効果を生んでしまうこともあります。例えば、サプリメントなどは、ヒトの健康増進のために作られたものですが、使い方によっては健康を害する場合があるのです。
活性酸素は「悪」なのか
ビタミンEは活性酸素の産出を抑える抗酸化作用を持ち、高血圧や動脈硬化の予防に効果があるといわれていますが、体に蓄積するため、過剰摂取で健康を害する可能性があり、骨粗しょう症になる可能性も示唆されています。活性酸素が「悪」とみなされるのは、過剰な酸化ストレスが細胞や組織を損傷するからです。しかし、活性酸素は、細胞内のミトコンドリアでエネルギーを作る際に発生していますし、殺菌作用もあります。活性酸素自体が悪いのではなく、「過剰に産出された状態」が問題なのです。
人での知見を動物に
動物には、ヒトと同じように生活習慣病などの病気が発生します。また、化学物質のリスク評価や、ヒトの病気に関する研究では動物モデルを用いられ、実験動物にはヒトと同じ病気を再現できる場合があります。つまり、人間と動物の健康や病気には、お互いに通じるところが多いのです。今、世界的に伴侶動物熱が高まり、動物の健康志向や予防医学への考えも高まっています。企業はさまざまな伴侶動物用商品を開発していますし、2019年には愛玩動物看護師を国家資格とする法律が成立しました。今後は、ヒトでのデータを動物の予防医学に生かせる部分が大きいでしょう。
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帝京平成大学 健康医療スポーツ学部 医療スポーツ学科 動物医療コース 教授 中江 大 先生
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