地球温暖化対策を経済学で考える「カーボンプライシング」

地球温暖化対策を経済学で考える「カーボンプライシング」

排出される炭素に価格をつける

経済学は、経済社会のさまざまな課題に対して政策や制度の面から解決方法を考える学問でもあります。地球温暖化を防止するための「カーボンプライシング」もその一例です。これは温室効果ガスに含まれる炭素に価格をつけ、炭素排出量に見合った金銭的負担を企業などに求める政策です。炭素排出量に応じて税を課す「炭素税」と炭素排出枠を企業などに割り当ててその枠(排出権)を売買する「排出権取引」が、カーボンプライシングの典型例です。気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」の参加国は、カーボンニュートラルをめざしてそれらの実施や検討を行っています。

「カーボンリーケージ」が起こる場合も

脱炭素については、各国が個別に排出量の目標値を決めて取り組んでいます。しかし、目標値もその達成時期もバラバラで、削減量をモニタリングする精度も懸念されています。結果として、企業が排出規制の厳しい先進国から緩い途上国に生産を移すことで、炭素の排出国が代わり、場合によっては排出量が増えてしまう可能性すらあります。これは「カーボンリーケージ」と呼ばれ、先進国は自国の炭素の排出削減を進める陰で、貿易や直接投資を通じて途上国に排出を押しつけているとの指摘があります。

炭素排出の責任を誰が負うのか

上述のカーボンリーケージは、炭素排出の責任を生産者が負うことで生じています。例えば、日本が中国の工場に依頼して製品を生産する場合、排出責任は消費国の日本ではなく生産国の中国が負うのです。そこで、消費者が責任を負うべきという考え方もありますが、その場合には生産者が炭素排出に無頓着になるといった問題が生じます。現状では人間が経済活動を行う上で炭素の排出は避けられません。排出責任のバランスを考慮しながら炭素の排出量をコントロールする方法を模索するような研究もなされています。このように問題の現実的な落とし所を考えることも、経済学の重要な役割なのです。

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学習院大学 国際社会学部 国際社会科学科 教授 石川 城太 先生

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経済学、国際経済学、環境経済学

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メッセージ

例えば、あなたは映画館の「学割」という仕組みがなぜあるのかを考えたことがありますか? 学割は誰にとって利益があるのでしょうか?「経済学」の知見を用いるといろいろなことが見えてきます。中学・高校までの経済の授業では、経済の動きや成り立ちの表面的な説明が中心です。しかし、大学ではそれらのメカニズムをより深く探求します。大学の学びでは、多方面から考察・模索する姿勢が大事です。自らリサーチクエスチョンを見つける姿勢を身につけ、経済社会のさまざまな課題の解決にチャレンジしていきましょう。

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