人工地震波を起こして海底の状態を診る
海底下のモニタリング
陸上で何か大きな開発が行われる場合は、必ず環境の変化の監視(モニタリング)が実施されます。では海底での資源開発の場合はどうでしょうか? 水の汚濁や周囲の生物資源量の調査、海底付近での映像観測等がなされていますが、資源が埋まる海底の下の本格的なモニタリングの実施にはまだ至っていません。これは、陸上の様に常に人の目に触れる場所ではないことも影響していると考えられますが、そもそも海の調査やモニタリングは技術的に難しいのです。
人工地震波で地下を診る
地下を調べようというとき、地震波の伝わり方を解析するとその構造や状態がわかるため、これまでは地下の断層やプレートの運動を起因とする自然地震のデータが利用されてきました。しかし、特定の地域を調査・監視するためには、いつ・どこで起こるかわからない自然地震を受動的に待つのではなく、能動的に人工地震波を起こし、地下の構造を調査し、その影響を常に調査するモニタリングが行われるようになりました。
地震波には縦波のP波と横波のS波があり、両方の伝播状況を分析することで詳しい地下の状態を診ます。海の場合、海底自体を直接揺らすのは難しいので、水中で出した音波を海底に伝える技術を使います。S波は水には伝わりませんが、音波が地盤に当たった時に地盤内でS波を生むという特徴を用います。人工的に作った波を出す装置と伝わった波や振動を受信する装置を海中や海底近くに設置し、波の伝わり方がいつもと異なった場合、地下に何らかの変化が生じていると予測できるのです。
変化を早めに察知する
海底の地下で起こったことが原因となって海中や海上で何らかの変化が見られたときには、地下の出来事はかなり進行していると考えられます。自然界の変化は突然起こっているように見えますが、それは私たち人間の観測精度が追い付いていないだけであり、実際には微小な変化が起きているのです。その変化を常に追うことができれば、軽度な変化での対処ができるはずです。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋資源エネルギー学科 准教授 鶴我 佳代子 先生
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