「怒り」に振り回されない方法
怒りの感情とは
誰でも他人に対して腹が立つことはあります。心ないことを言われた、バカにされた、無視された、ものを取られたなどの出来事に怒りの感情が湧き起こるのは、自分が尊重されていないという感覚になるからです。人間は自分を大切にする生き物であり、評価してもらいたいという承認欲求を持っています。自分のふがいなさに腹が立つこともありますが、それは他者と自分を比較して自分の評価が低く思われるのではないかという思考によるため、自分が尊重されない感覚と根源は同じです。ですから、怒りは人間にとってとても大切な感情の一つです。
怒りを反すうする
怒りの感情が起きた時、その場で表出せずに我慢することも多いでしょう。ムカムカした気持ちを抱えていると、その出来事を思い出して怒りの感情が反すうされます。反すうとは、何度も繰り返し思い出してしまう(再体験してしまう)ことです。記憶に基づいて怒りが喚起されると、心拍数が上がり、呼吸が速くなるなどの生理的な反応も繰り返されます。何度も繰り返すことで気持ちだけでなく、体にもストレスをかけ続けてしまうのです。
2つの対処法
怒りの反すうにはどう対処すればよいのでしょうか。手立ての1つは「筆記開示」という方法です。怒りの原因となった出来事を紙に書き出すのです。すると、自分の気持ちと向き合うことができ、その出来事が心の中で整理されます。心の中が整理されるとは思考が統合されるということであり、その結果、怒りの反すうはなくなります。
もう一つは「マインドフルネス」です。感情を無理に抑制しようとすると、かえって反すうしてしまうので、そういうときにはむしろ、感情をそこに置いたまま意識を呼吸や身体に向けます。すると、ネガティブな思考や感情は勝手に消えていきます。こういう心の習慣を身に付けるために、例えば、毎日同じ時間帯に座り、自分の呼吸や身体に意識を向ける練習を続けます。毎日続けることで、怒りに振り回されそうになっても、そこからうまく意識を離れさせることができるようになるのです。
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白鴎大学 教育学部 発達科学科 心理学専攻 教授 湯川 進太郎 先生
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