学校内トラブルを解決するには、心理的プロセスの分析が不可欠だった
学校内のトラブルは、なぜ発生するのか
ケンカやいじめなど、学校内ではいろいろなトラブルが起こります。こうしたトラブルは、その当事者だけが発生させているのではありません。例えば友人と口論になった時、ほかのクラスメートが「2人とも落ち着いて!」などと声をかけた場合と、傍観していた場合、数人が一緒になって片方を非難した場合とでは、口論のエスカレート度合いが違ってきます。「教育心理学」では、生徒の問題行動や学校内のトラブルがどのような経緯で発生したかを、個人と環境との相互作用を含めたプロセスでとらえて研究します。
流されやすい雰囲気が問題
「いじめ」が良くないことだという認識は、誰もが持っています。それでもいじめが発生する原因を分析すると、いじめの頻度とクラスの「雰囲気」とが、密接に関わっていることがわかりました。
クラス担任が「いじめはダメ!」とはっきり示し、いじめが起こった時も、とても心配して生徒のために動いてくれる、そんな様子を生徒たちも見ているクラスでは、いじめの傍観者が少なく、いじめ自体が起きにくいという研究結果が出ています。クラスのリーダー的な生徒が、いじめを制止する態度を見せるクラスも同様です。
一方、傍観者が多いクラスでは、普段はいじめる側でない生徒が、その場の雰囲気に流されて、いじめに加担するケースも多々見られます。
ちょっとした配慮で、いじめが起きにくい雰囲気に
ひと昔前まで、仮にいじめられても自宅に戻れば自分の「居場所」がありました。ところが近年、帰宅後もSNSやメールを使ったいじめが続くことがあります。そんなふうに、相手を追い詰めるようないじめを発生させないためには、「いじめはNO!」といった雰囲気を作ることが重要です。
誰かが学校を病欠したら、「風邪かな? 薬飲んだかな?」と心配する気持ちを口に出し、登校してきたら「もう大丈夫?」と声をかける、たったそれだけのことでも、一人ひとりが心がければ、クラスの中にお互いを信頼し合う気持ちが生まれ、トラブルが起きにくくなるのです。
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先生情報 / 大学情報
広島修道大学 健康科学部 心理学科 教授 西野 泰代 先生
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