障害のある子どもの、心と体の動きを探求する
障害のある子どもの内面を探る
障害のある子どもの心の世界の特徴を実証的に調べる、障害児心理学という学問分野があります。より広いジャンルで言うと、特別支援教育や発達心理学の中に含まれる領域で、例えば知的障害や自閉スペクトラム症などの障害のある子どもたちは何を考えているのか、どのように世界を見たり関わったりしているのか、といった事について研究します。
障害特性を、体の動きから考える
障害のある子どもの中には、言葉による意思の疎通が十分にできない場合や、長く椅子に座っていられない場合もあるので、調査では比較的シンプルな課題に取り組んでもらうことがあります。その際の行動から、こういうことを考えているのでは、ということを推測します。例えば「おぼん運び」という課題では、水を入れたコップを置いたお盆を渡して、その運ぶ時間とこぼれた水の量を計測します。ダウン症という障害がある子どもの多くは、運ぶのは遅いけれども水はほとんどこぼさずに運びます。速さよりこぼさないことを大切にしているのかもしれません。一方、自閉症という障害がある子どもたちでは、速く運ぶけれども水をこぼしてしまうことがよくあり、自分の行動に伴う物事の変化に鈍感なのでは、と考えることができます。このようにして、障害のある子どもたちの心の世界の特徴を調べていきます。
これからの障害児心理学
生後すぐに障害が判明するダウン症の子どもについて、1歳頃から定期的に同じ課題、例えば積み木遊びに取り組んでもらい、成長に伴う変化を調べる研究も行われています。こうした長期的な調査結果をもとに、スマートフォンなどで使用できる発達支援ツールが、今後開発されていくかもしれません。障害児心理学は、様々な学校で特別支援教育を担う先生たちにとっては子どもへの理解を深める助けとなり、また教師をめざす若者たちには障害のある子どもへの興味や親しみを持つきっかけにつながります。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
東京学芸大学 学校教育教員養成課程 特別支援教育専攻 准教授 平田 正吾 先生
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