ハム・サンドイッチの切り方と経済の理論
ハム・サンドイッチの切り方
突然ですが1枚のハムを2枚のパンではさんだハム・サンドイッチを考えましょう。このハム・サンドイッチを、包丁を使い一回のカットで2等分にすることはできるでしょうか? この話がなぜ経済学と関係しているのでしょうか?
「お金」の研究だけでない経済学の側面
経済学は、必ずしも「お金」に関する問題を研究する学問ではなく、協力したり、対立したりする、個人や集団からなる社会をとらえようとする側面も持っています。例えば、エスカレーターに乗る際、立ち止まる人は片側に並ぶという慣習があります。これは、「自分ひとりだけが行動を変えれば損をする」という状態と見ることができます。また最近話題になった、マスクや消毒液などの買い占め問題も、「みんなが買い占めるから自分も買わないと損をする」と考えた結果、市場から一時的に在庫が消える状態が生まれます。このように、経済学では、自分がとる行動に対して相手がどのように反応するのかをうかがう必要がある状況を「ゲーム」と呼び、ゲームの状況にある人々の行動を分析することは、経済学の重要なテーマのひとつです。
「あるか、ないか」という問題
先ほど述べた例以外にも、世の中の多くの出来事をゲームとしてとらえることができます。ゲームの状況にある人々が「自分だけが行動を変えれば損をする」という状態を「ナッシュ均衡」と呼びます。そのようなナッシュ均衡は、どのようなゲームにも存在しているのでしょうか。ここではじめに説明した、ハム・サンドイッチの切り方について思い出しましょう。「ナッシュ均衡があるか」ということと「ハム・サンドイッチの切り方があるか」ということは、両方とも「あるか、ないか」という存在問題として理論的にはとらえることができます。そして、どちらも「不動点定理」という数学的な手法を用いることで、存在を保証することができるということが知られています。このように、理論を突き詰めていくことで、一見関係のないものごとの関連性が見えてくることもあります。
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先生情報 / 大学情報
白鴎大学 経営学部 経営学科 講師 八尾 政行 先生
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