講義No.10581 児童学 教育

子どもと絵本の関係-絵本をつくりながら考える-

子どもと絵本の関係-絵本をつくりながら考える-

「絵本の勉強」とはどういうことか?

「大学で絵本の勉強をしています」と聞いたとき、それは何を指していると思いますか? 美術系の大学ならそれは制作を指すでしょう。人文系なら作家論、作品論、発達心理学や社会学的な視座も考えられます。そうした学究的なアプローチもさることながら、絵本が子どもに向けられた本であるという前提においては、絵本を手渡すということにも学びが必要なのではないでしょうか。つまり、保育士が目の前の子どもを理解し、発達段階と興味関心を重ねて、より適切な選書をするということにも広い学びが必要なのです。

子どもに向けて絵本をつくるということ

こんな絵本があります。あるプロ野球球団の公式絵本です。それに登場する選手たちですが、すべて動物に置きかえられていました。それには理由がありました。かわいい動物でこの絵本に親しんでもらおうということではなく、選手には移籍や引退があることから、似顔絵で選手を描き込むことによって、その絵本があっという間に古びてしまうのを球団は怖れたのです。これは一見シビアな事情に思える話ですが、実はここに絵本というものの大切な性格が汲んで取れます。それは「読みつがれる絵本」こそ、いい絵本であるという認識です。

いい絵本とは

子どもの本の著名なオーソリティーの意見に、「いい絵本はないですかと尋ねられたら、長生きしている絵本をおすすめしています」というものがあります。つまり、長く読み継がれているという、そのこと自体が子どもの本として魅力的なものである保障になっているというわけです。いつの時代も子どもにとって常に新鮮であり続ける絵本があります。子どもとの間に立って、その魅力を理解し、その本の存在をつないでいくということは、とても大切なことと言えるでしょう。優れた読書体験は、大人になっても記憶に残っています。共感と子ども理解を通じて物語を共有することは、子どもの深いところに安心感、安定感を築くに違いありません。

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先生情報 / 大学情報

名寄市立大学 保健福祉学部 社会保育学科 教授 堀川 真 先生

名寄市立大学 保健福祉学部 社会保育学科 教授 堀川 真 先生

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保育学、造形学

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メッセージ

名寄市立大学の社会保育学科では、単に保育所の中での子育て支援にとどまらず、社会の中での子どもの多様な問題に対応できる人材を育成しています。例えば、虐待など社会的擁護が必要な子どもへの児童相談所での支援、発達障がいのある子どもへの特別支援学校での支援を学ぶこともできます。保育士・幼稚園教諭はもちろん、社会福祉主事任用資格や児童福祉司任用資格、児童指導員任用資格などの資格取得もできます。
未来を支える子どもの支援や社会的課題について、一緒に学び社会で活躍できる能力を身につけましょう。

先生への質問

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「ケアの未来をひらき、小さくてもきらりと光る大学をめざす」名寄市立大学では、保健医療福祉の連携と協働、少人数教育の実践、地域社会の教育的活用と地域貢献に、基づく教育・研究を進め、教養教育の充実を図りながら社会に貢献できる職業人の育成に努めています。
人口減少、少子高齢化が進む中、地域の活性化に少しでも貢献できるよう、本学の総合的専門職養成大学の特徴を生かした保健・医療・福祉・保育(子育て)・食育の観点から産学官の連携を図り、課題解決に向け取り組んでいます。