子どもと絵本の関係-絵本をつくりながら考える-
「絵本の勉強」とはどういうことか?
「大学で絵本の勉強をしています」と聞いたとき、それは何を指していると思いますか? 美術系の大学ならそれは制作を指すでしょう。人文系なら作家論、作品論、発達心理学や社会学的な視座も考えられます。そうした学究的なアプローチもさることながら、絵本が子どもに向けられた本であるという前提においては、絵本を手渡すということにも学びが必要なのではないでしょうか。つまり、保育士が目の前の子どもを理解し、発達段階と興味関心を重ねて、より適切な選書をするということにも広い学びが必要なのです。
子どもに向けて絵本をつくるということ
こんな絵本があります。あるプロ野球球団の公式絵本です。それに登場する選手たちですが、すべて動物に置きかえられていました。それには理由がありました。かわいい動物でこの絵本に親しんでもらおうということではなく、選手には移籍や引退があることから、似顔絵で選手を描き込むことによって、その絵本があっという間に古びてしまうのを球団は怖れたのです。これは一見シビアな事情に思える話ですが、実はここに絵本というものの大切な性格が汲んで取れます。それは「読みつがれる絵本」こそ、いい絵本であるという認識です。
いい絵本とは
子どもの本の著名なオーソリティーの意見に、「いい絵本はないですかと尋ねられたら、長生きしている絵本をおすすめしています」というものがあります。つまり、長く読み継がれているという、そのこと自体が子どもの本として魅力的なものである保障になっているというわけです。いつの時代も子どもにとって常に新鮮であり続ける絵本があります。子どもとの間に立って、その魅力を理解し、その本の存在をつないでいくということは、とても大切なことと言えるでしょう。優れた読書体験は、大人になっても記憶に残っています。共感と子ども理解を通じて物語を共有することは、子どもの深いところに安心感、安定感を築くに違いありません。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
名寄市立大学 保健福祉学部 社会保育学科 教授 堀川 真 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
保育学、造形学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?