冬にトマトが食べられるのは、施設園芸農業のおかげ!
作物の生育に適した環境を研究する農業気象学
夏野菜が一年中食べられることを不思議だと思いませんか。それを可能にしているのは、ガラスやビニールなどで囲ったグリーンハウス(園芸栽培用温室)で、環境を制御しつつ野菜を栽培しているからです。施設園芸と呼ばれる農業生産法で、作物が本来生育しにくい季節にも、栽培が可能です。農業気象学は、農業生産と気象との関係などを研究する学問で、施設園芸においては、グリーンハウス内の温度やCO₂濃度などの環境データと作物の成長との関わりを解析します。ハウス内にセンサや環境制御装置を設置し、温度やCO₂濃度、水やりなどを自動制御することで、作物がすくすく成長するような環境をつくり出します。
美味しい野菜を作るための光合成研究
野菜の収穫量を増やし、品質を向上させるためには、光合成の研究が重要です。光合成とは、植物が光エネルギーを利用して、成長に必要な栄養(糖)を合成する仕組みです。植物は、光合成によって葉に取り込んだCO₂でデンプンなどの糖を作りますが、その量が植物の生育に強く影響するのです。そのため、グリーンハウスの光の透過性を向上させて、光合成量を増やす研究がなされています。また、CO₂濃度を高くすると、葉にCO₂を取り込みやすくなって、光合成量が増えるので、グリーンハウス内のCO₂濃度を高めて、光合成量や収穫量を増やす研究がなされています。
作物情報の「見える化」
環境データや作物の画像データなどをAIに学習させて、光合成などの作物情報を「見える化」する「IoP(Internet of Plants:植物のインターネット)」が、高知県内で推進されています。高知県では、ハウス内の環境データ、画像データや出荷データなどを、リアルタイムで集約する「クラウド」の整備が進められています。スマホやパソコンで農業者がクラウドにアクセスすれば、ハウス内の作物の光合成量の推定値などを確認することができます。光合成の研究は、農業のデジタル化にも役立てられています。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
高知大学 農林海洋科学部 IoP共創センター 准教授 野村 浩一 先生
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