美しい景観だけじゃない、棚田から見える「自然との共生」
なぜ棚田がつくられたのだろう
「棚田」は山の斜面などの傾斜地に階段状につくられています。上の田んぼから下の田んぼへ水を供給することにより、水源の確保と用水の管理がしやすい仕組みになっています。棚田は中山間地に多く、限られた水を分け合い、地滑りなど災害のリスクにも向き合いながら、暮らしを成り立たせてきた人々の知恵と工夫の表れでもあります。近代化によって環境破壊が進む中でも生物の多様性が保たれるなど、棚田は「人と自然の共生の仕組み」としても評価されています。
地域に入り込んで、農作業も、祭りも
棚田の1年は、田んぼの畦(あぜ)を鍬(くわ)で手入れする「畦切り」からスタートします。棚田の研究では、年間を通じて地域コミュニティに入り込みます。地域住民と一緒に棚田の伝統的な農作業を体験しつつ、祭りなど地域の文化にも触れながら、厳しい自然条件の中でどのように暮らしを営んできたのかを調べるのです。
棚田にはダムのような役割もあり、管理の手が止まると災害時のリスクが高まるなど、人々の暮らしに大きな影響を及ぼします。しかし地域では高齢化により棚田での稲作は担い手が不足しています。そこで棚田保全のために、新たな地域の運営や資源管理など、これからの持続可能な社会の仕組みづくりを地域住民と研究者が一緒になって模索しています。「実践的な調査」と「地域づくり」は連動するような形で進んでいるのです。
日本の棚田が、世界とつながるかも!?
傾斜地での農業は、日本の棚田だけではありません。イタリアではブドウなどの果樹園、中国では米、ジャガイモやトウモロコシが栽培されているなど、世界各地に傾斜農地(テラス農地景観)はあり、同じような厳しい条件下で持続可能な資源利用の仕組みづくりが実践されています。それらを比較研究するだけでなく、互いの地域での経験を分かち合い、生かしていけるような場づくりをするために、地域をつなぐ国際的なネットワークも広がっています。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
常葉大学 社会環境学部 社会環境学科 教授 山本 早苗 先生
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