高齢になっても、おいしく食べ続けるために
柔らかい食事の危険性
食事は単に栄養を摂取するだけの生命維持活動ではなく、生きる喜びにもつながる大切なものです。笑いながらおいしいものを食べて人生をまっとうすることが理想ですが、高齢になると筋力や機能の低下から噛む力が弱まるために、介護の現場では柔らかい食事ばかりを提供する傾向が見られます。しかし、柔らかい食事に偏ると、口の動きがさらに鈍くなり、次第に力が入れられなくなります。また食品の多様性も低下するために栄養状態が悪くなり、全身のサルコペニア(筋肉量の低下)によるロコモティブシンドローム(運動器症候群)につながり、心身が衰えてしまいます。
正しい姿勢で食事を
人は足の裏がしっかり床についている姿勢のとき、噛み合わせの力を最大限に発揮することができます。車椅子に乗ったまま食事をするなら、足乗せ台ではなく、床に足を下ろすことが大切です。正しい姿勢で食べることで、内臓の圧迫を防ぎ、高齢者で心配される誤嚥(ごえん)も防ぐことができます。誤嚥とは、口に入れた食物や液体が、誤って気管に入ってしまうことです。気管と食道の境目には喉頭蓋(こうとうがい)という蓋(ふた)があり、飲み込んだ時には蓋が下がって気管を塞ぎ、食道に食物が落ちる仕組みになっています。しかし、首や体が前傾するような姿勢で食べると、喉頭蓋が正しく動かず、誤嚥につながります。
おいしく食べてもらう介護の技術
日頃から発音に問題がなく、左右を見ながら話しができる人は口の機能が衰えていないため、しっかりと食事を取ることができます。しかし、口の中で声がこもってしまう構音障害がある場合、噛む力が弱く誤嚥の危険性も高いため、食べる姿勢や食べ物の選定などの支援が必要です。
介護を受けながらであっても、食べておいしかったと感じることで、次はこれが食べたいという意欲が高まります。誰もが人生の最後までおいしく食べられるようにするには、介護の技術をより高めていくことも必要なのです。
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国際医療福祉大学 医療福祉学部 医療福祉・マネジメント学科 講師 畠山 博之 先生
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