伝説の経営者、出光佐三を育てた教育とは

伝説の経営者、出光佐三を育てた教育とは

経営者 出光佐三

出光佐三(いでみつさぞう)は石油関連事業を行う出光興産の創業者で、明治から昭和にかけて活躍しました。特に有名なのが昭和28年の「日章丸事件」です。イギリスとの紛争に発展しかねない状況下でイランと極秘に交渉し、安価で質の良い石油を調達しました。また「解雇しない」「定年を設けない」「出勤簿を作らない」「労働組合を作らない」という「四無主義」を掲げ、社員を家族のように大切にしたことでも知られています。そんな佐三の経営理念や思想には、神戸高等商業学校(現・神戸大学)で受けた教育が大きく影響しています。

理念を育てる教育

明治期の日本には、商売は卑しい行為であるとする「賤商意識」が残っていました。しかし、神戸高等商業学校の初代校長、水島銕也(てつや)は「士魂商才」を掲げ、武士の魂と商売の心得を身につけた人材育成に生涯を捧げました。すなわち実学を重視するとともに生徒たちの修養にも力を注いだのです。
また同校には「大地域小売業」を唱えた内池廉吉(れんきち)教授がおりました。「大地域小売業」とは、商人が生産者と消費者を媒介し、両者に便益を与え、国民経済発展に貢献することを商業の使命とするというものです。
こうした神戸高等商業学校の教育者たちの理念は、出光佐三にも受け継がれ、上記した「日章丸事件」のみならず、全国に店舗を展開して消費者ニーズに細やかに対応し、適正価格で商品を安定供給するという彼の経営手法の動機となりました。

経営者の生涯から見えてくるもの

出光興産は創業から長い間、資金難に悩まされました。それは目先の利益ではなく、人、社会、国家のためになる商売に力を尽くしたからです。佐三のように、会社を社会の公器と考えて経営に尽力した経営者は数多くいます。
経営学の中の「経営者史」という分野では、経営者の経営手法や実績、またその生涯を調べることで、彼らの資質が会社に与える影響や、「会社は何のためにあるのか」という根源的な問いに迫っていきます。

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高崎経済大学 経済学部 経営学科 准教授 井上 真由美 先生

高崎経済大学 経済学部 経営学科 准教授 井上 真由美 先生

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経営学、経営史、経営者史、経営倫理

先生が目指すSDGs

メッセージ

「ビジネス」と聞くと、お金を稼ぐために忙しく立ち回るイメージを持つかもしれません。それも間違いではありませんが、お金を稼ぐことの意味や、働くことの意味について深く考えていた経営者が、世界や日本にたくさんいたことを知ってほしいです。
彼らはどういう考えを持って、どういう会社を残したのか。そうした観点からビジネスをとらえてみると、あなたにとってやりがいのある仕事や、就職したい会社のイメージがより見えやすくなるでしょう。

先生への質問

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高崎経済大学は、約3万人近くの卒業生が全国各地で企業のトップや地域で官民リーダーとして活躍しています。本学の教育・研究の目的は、幅広い教養を身につけ、豊かで、幅広い人間性に富み、国の内外と地域の向上発展に寄与する人材を育成することです。また、「自主・自立」を理念とし、学生の自主性を尊重するとともに、自立性を助長することを大学教育全体の方針としています。
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