古民家カフェは中東でも人気? ~観光から見る世界の変化~
中東の旧市街でも古民家カフェが人気
日本では最近、古民家を現代風にリノベーションした古民家カフェが人気です。実は中東でも、モロッコのマラケシュやシリアのダマスカスに現存する旧市街では、古い建物を再生させたカフェやギャラリーなどが人気を博し、文化イベントや音楽ライブが多数開催されています。
再開発された旧市街が観光客を中心に活性化すると、経済的に潤うだけでなく、地元の人びとも集う場としてさまざまな文化活動が創出されて賑わいが出るというプラスの効果が生まれてきました。さらに、観光地として世界から注目され人びとが集まると、自分たちの文化や社会的主張を国際社会に発信しやすくなるという利点も生まれています。
観光地化をめぐる問題
他方で、伝統や歴史のある場所が観光地化して多くの人が集まると、さまざまな弊害も発生します。ひとつは、昔ながらの街並みや生活が失われてしまうということです。そして、大量の人が押し寄せることで、地価や物価が上昇するほか、騒音やゴミをめぐる問題も深刻化し、そこに住む人びとの生活が圧迫されてしまいます。これらの弊害は近年では観光公害と呼ばれ、その対策にと各地でさまざまな形で知恵が絞られています。中東諸国でも、行政のほかにもコミュニティ組織やNPOを中心とする市民運動が、これらの問題に積極的に対処しようと自発的な活動を展開するようになっています。
観光を抜きにしては語れない現代社会
プラスの面もマイナスの面もあるにせよ、現代はもはや観光抜きには語れない時代です。事実、中東の人びとは観光客を受け入れるだけでなく、自らも旅行者としていろいろな場所を訪れて学び、自分たちの人生や社会を常に国際社会のなかに位置づけています。
また、移民なども含めて、広い意味で人が移動することが当たり前の時代になっています。人が移動するということは、それにともない社会や人も変わります。観光研究は、そんな移動にともなう人や社会の変化や、あるいはよりよい社会のあり方について構想する学問領域でもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
高崎経済大学 地域政策学部 観光政策学科 准教授 安田 慎 先生
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