1億語のデータベースから日本語を探ろう!
定量的に言葉の使い方を調べる
日本人は当たり前のように日本語を使っていますが、どういう性質の言葉なのか、間違った日本語と言われるものはなぜ間違いなのかなど、意外にわかっていないものです。そもそも、国語の授業では正解とされない、くだけた日本語は、間違いなのでしょうか。理解のポイントになるのが数字です。定量的に、多くの用例を集めてとらえるという方法論です。すると、日本語の実態が把握できて、自分の知っている範囲の狭さや、知らない言い回しがたくさんあることがわかります。そのために使われる用例データベースが、「コーパス」です。
発見に満ちている日本語コーパス
日本語コーパスには、研究者が自分のために作るものもあれば、国立国語研究所などが作る大規模なものもあります。『現代日本語書き言葉均衡コーパス』の場合、1970年代から2008年まで30年分の用例を1億語ほど蓄積しています。例えばそのコーパスで「やはり」という言葉を検索すると、「やっぱり」や「やっぱ」「やぱ」などという形が出てくるのです。その言葉がいつ頃から使われているかもわかります。1億語もあると、想像しない形が表れることもありますが、想像しない形という結果は、実はコーパスを用いた言語研究の本質でもあります。一般の研究では仮説を立てて検証しますが、日本語の用例の研究では量を集めて検索したら、思いがけないものが出てくる要素が強いといえます。
日本語史から見えてくるもの
日本語は古くから文字の記録が残っている数少ない言語のひとつです。表現の変化を研究することで見えてくるのは、例えば、日本人は平安時代から、外国から入ってきた言葉に活用語尾を付けることで動詞や形容詞を作ってきたという事実です。例えば「エモい」は今だけの流行語と思いがちですが、伝統的な枠の中に入っているわけです。現代の流行も、もともとの日本語史の流れの中に見いだすことができます。そのうえで、言葉には多様性があり、絶対的な正しさは存在しないということにも気づけるのです。
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先生情報 / 大学情報
玉川大学 文学部 国語教育学科 教授 冨士池 優美 先生
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