「はやぶさ2」のロケット開発 ~宇宙大航海時代の最前線~
「はやぶさ2」を成功させた電気推進ロケット
太陽系形成の謎を探る調査に旅立った小惑星探査機「はやぶさ2」は、2020年12月、小惑星の物質が入ったカプセルの回収を大成功させました。現在はさらなるミッションに向け、宇宙を旅しています。その飛行に使われているのが電気推進ロケットである「イオンエンジン」です。これまでロケットといえば熱エネルギーを利用する化学エンジンが主役でしたが、「はやぶさ2」の成功により世界中が電気推進ロケットに注目しています。
宇宙空間だから生きる仕組み
電気推進ロケットは主に太陽電池によって太陽光を推進エネルギーに変換するもので、化学ロケットより推進力は小さいですがはるかに低燃費です。そのため推進剤の代わりにたくさんの装置を積むことができます。地上からの打ち上げには向きませんが宇宙空間で使用するエンジンとしては非常に優れているのです。
ただ、現在国際協力のもとで構想が進む有人火星探査、月面基地や太陽発電衛星の建造、小惑星捕獲といった大型ミッションを電気推進ロケットで遂行するには、大出力のエンジン開発が必要です。
遠くない未来のために
そもそも宇宙は地上と異なり、機材が一度その場に置かれるとメンテナンスがほとんどできません。さらに激しい熱サイクル、高真空、高エネルギー放射線やプラズマ放射などの過酷な環境下で安定作動し、軽量かつ簡単・高効率な構造が要求されます。そうした中で大型衛星・探査機などを電気で推進させるべく、「はやぶさ」「はやぶさ2」で用いられた静電加速型のイオンエンジンのほか、電熱型の直流アークジェットエンジン、電磁加速型の電磁加速プラズマエンジンなど、加速機構の異なる多様な電気推進ロケットの開発が進められています。
2027年と2028年、「はやぶさ2」が再び地球スイングバイ(地球の重力を利用して軌道と速度を変えること)を実施します。その頃、人類の宇宙利用は大きく進展しているでしょう。人が宇宙を旅行し、太陽系そのものを生存圏とする時代も夢物語ではないのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪産業大学 工学部 機械工学科 教授 田原 弘一 先生
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