福祉工学で「介護が必要になる人」を減らしたい!
転倒予防になる歩行チェックを身近に
「おばあちゃんが転んで、大ケガをした!」。そんな話を耳にしたことはありませんか。高齢者は、足腰の状態が悪くなって転倒するリスクが高まります。一度の転倒がきっかけで、寝たきりになってしまうこともあります。そこで、高齢者の転倒を防ぐことを目的に、歩行機能やバランス機能を測る装置の開発が行われています。
これまで歩行機能を測るには、専門家の知識や大がかりな装置が必要でしたが、生活の中でも自分の歩き方を知ることができる技術の開発が進められています。このように、介護や福祉の現場で役立つモノづくりに携わる専門の一つに「福祉工学」があります。
技術の単純化・小型化がもたらすイノベーション
開発された装置は靴の中にセンサを入れ、足底にかかる圧力データを測定、そのデータを無線でスマートフォンに飛ばし、画面上でチェックするというものです。センサの設計は人間の骨格構造に基づいており、正確な評価が可能です。技術を単純化したことで装置は小さくなり、どこでも誰でも使えるものになりました。現在は、大きな病院に行かなくても、自宅や近隣の介護・福祉施設などで計測でき、運動指導士などの専門家が圧力分布データをもとに、必要なトレーニングを行うことで歩き方の改善につながっています。
「一生自分で歩ける足」をめざす
この技術は介護や福祉分野に限らず、スポーツや日常の健康管理などすべての人にも広められます。例えば若い女性に向けた開発アイデアもあり、日常的な歩き方から歩行リズム・バランス・美足度(足の美しさ)などの状態を、見える化するシステムも開発されています。若い頃から、足元に関心を向けてもらうことが、「一生自分で歩ける足」の基盤づくりになるでしょう。
病気の人をケアするのは医療ですが、病気になる前の人の健康を守る福祉も大切です。元気な高齢者が増えれば介護を必要とする人を減らすことができます。福祉工学はそういった高齢者や周りの人達、全ての人のサポートできるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
奈良女子大学 工学部 工学科 講師 安在 絵美 先生
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