「環境によい」とは? 数字で見る環境負荷の削減効果

「環境負荷」の計算方法
現在、日本の多くの企業が自社の地球環境への貢献について公表しています。そこでは温室効果ガスの削減量等が報告されていますが、これらの数値は、どのようにして算出するのでしょうか。
例えば自動車であれば、原料を採掘して製造し、使い、修理して、捨てるまでの全ライフサイクルを定量化して、環境負荷について評価します。これを「ライフサイクルアセスメント(LCA)」といい、この定量化の方法は国際規格(ISO)で決まっています。「環境負荷排出量=Σ(使用量)×(排出量原単位)」という計算式に数値を入れて算出しますが、「使用量」を知ることがとても困難です。製品の一生で使った電気や燃料、資源などをすべて調べなければならないからです。
環境負荷の削減効果
自動車は、廃車や事故にあった車でも、エンジンやバンパーなど部分的に使用できる部品が残りやすく、部品のリサイクルがしやすい製品です。このリサイクル部品を使った方が、新たに部品を製造するよりも、必要な資源や燃料などの「使用量」が抑えられて、環境にも優しいと実際に使われてきましたが、詳細な「使用量」を調査するのは困難で、具体的な環境負荷の削減量は未知でした。実際に調査したところ、新品の部品を製造、調達する場合よりも、リサイクル部品を活用する方が、温室効果ガスを約9割も抑制できることがわかってきました。
値の信頼性を上げる
細かい調査を通じて確度の高い「使用量」の数値を把握し、環境負荷を算出、可視化する調査技術は、これから企業にとって非常に大きな価値を持ちます。2026年度よりCO₂の「排出量取引制度」と呼ばれる制度が本格的に始まるからです。これは温室効果ガスの排出量を抑制する目的で、企業間で排出枠を売買する制度です。ここにお金が発生するとなれば、企業の省エネなどの環境対策の促進につながるでしょう。地球環境への貢献のためにも、温室効果ガス削減のための工夫と、削減効果を知るためのより確実な調査技術が求められています。
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富山県立大学工学部 機械システム工学科 講師山田 周歩 先生
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