先人の知恵や、今を生きる私たちの声を未来に伝えていく技法
進む古文書などの資料のデジタル化
「デジタルアーカイブ」という概念はまだ新しく、この言葉が出てきて25年ほどです。紙などで残されてきた古文書や浮世絵などの貴重な資料をデジタル化して活用するための技法や、今生きている人々から伝統文化や戦争体験などの貴重な証言を、当事者の声として残していく「オーラル・ヒストリー」のデジタルアーカイブも研究の対象です。さらに、デジタル化した資料の活用には、著作権やプライバシーの問題にも関わります。
文化資料を読み解き、知を共有する
平安時代を起源とする言葉遊びが、「判じ絵(はんじえ)」という絵解き遊びとなり、江戸時代には庶民に広く親しまれました。遊び以外にも、字が読めない人にも、季節ごとの行事がわかるような絵暦(えごよみ)や、お経を読むことができる絵文字経も作られました。こうした歴史的資料に触れることは当時の人々の文化や考え方を深く知るために欠かせません。しかし、実物の資料は傷みやすく、難解な読み解きには少数の専門家しか関われませんでした。デジタルアーカイブの技法により、現在は多くの人がデータを共有できるようになり、古文書の解読や研究も今までにない速度で進んでいます。
「当事者の声」をそのまま後世に
デジタル技術の登場で、映像や音声のアーカイブも可能になりました。モノが話すことはありませんが、今を生きる私たちの声はそのままの形で未来へ残していくことができます。従来の口述筆記では、当事者の声は筆者しか聞くことができませんでしたが、技術の進歩で当事者の「想い」を音声などで伝えていくことが可能になりました。そのうえで、語り手の想いを飾らず話してもらうための方法や、聞き手の技術についても研究が進められています。
人々は歴史から多くのことを学んできました。よりよい未来のために、過去に向き合うことは重要です。貴重な一次資料に触れ、収集しまとめ上げていく能力は、情報化社会を生きる私たちの未来にも大きな力を与えてくれる大切なものです。
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先生情報 / 大学情報
岐阜女子大学 文化創造学部 文化創造学科 デジタルアーカイブ専攻 教授 谷 里佐 先生
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