ポリフェノール「ケルセチン」をアセチル基でドレスアップ!
栄養の吸収効率を高める機能性の研究
生活に不可欠な基盤の一つが食です。食品と体との関係について研究するのが食品科学、あるいは食料科学といわれる学問です。現在、この分野で注目を集めているのが食品の機能性に関する研究です。その研究の一つとして、摂取した栄養素の吸収効率を高め、人間にとってプラスになる効果を引き出すため、さまざまな手法が研究されています。
ケルセチンの機能性が2倍以上にアップ
ポリフェノールは細胞を傷つける活性酸素の働きを抑える注目の成分です。その種類は8千以上にも及ぶといわれていますが、タマネギなどに多く含まれるケルセチンを使った実験では、「化学修飾」により大幅に機能性が高まることが実証されています。化学修飾とは、タンパク質などに特定の官能基をつけることで機能を変化させることです。ケルセチンをアセチル基で化学修飾したところ、その吸収効率がアップし、機能性も2倍以上になるというデータが得られました。一方、メチル基、ベンジル基を修飾した実験では、吸収効率のアップはみられませんでした。このことから、ケルセチンにはアセチル基というように、特定の組み合わせをすることで吸収効率が上がるということがわかり、現在もさまざまな組み合わせでの試行錯誤が続いています。
課題はメカニズムのさらなる解明
ケルセチンに比べ高い吸収効率をみせるアセチル化ケルセチンですが、細胞に取り込まれる際には、アセチル基がついたままで入っていくケースと、どこかの段階でアセチル基が取れて通常のケルセチンとして入っていくケースがあります。しかし、その正確な比率やなぜそうなるのかのメカニズムはわかっておらず、さらなる解明が期待されています。解明が進めば、ポリフェノールの吸収効率や機能性をより高めることが可能になるでしょう。そうなれば、その研究成果はポリフェノールだけでなく、ほかの成分の化学修飾による機能性アップの可能性という面においても画期的な事例となるため、さらに注目度を増しています。
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先生情報 / 大学情報
鹿児島大学 農学部 農学科 食品生命科学プログラム 食品分子機能学 准教授 坂尾 こず枝 先生
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