誰のため? なんのため? 現地の目線で探る適切な国際協力
現地の視点から考える国際協力
文化人類学は、現地の視点から「世界」を考える学問です。現地に住み込み、現地の人々と同じものを食べ、同じ言葉で話し、同じ屋根の下で寝る。そうやって現地の視点に立った時に「国際協力はどうあるべきか」ということを考えるのです。現場の視点から社会を眺めると、私たちの「当たり前」が揺さぶられることが多々あります。例えば、自然環境を守ることは「いいこと」かもしれません。しかし、現場では自然を守るために自然保護区を作ったところ、住民が強制退去に合い、貧困に陥るなどの問題が生じています。決して、自然を守ることや貧困対策を否定しているわけではありません。重要なのは「どのように」支援をするべきなのか、それを問い続けるべきだ、ということです。国際協力は、対象となる地域の人々のために行われるものだからです。
フェアトレードとエコツーリズム
そうした国際協力のあり方として注目すべきテーマが2つあります。一つはフェアトレードやエコツーリズムなど、ビジネスを通じた問題解決の可能性を探ることです。フェアトレードは、商品を購入することで生産地の貧困解消を目指す仕組みです。エコツーリズムは、自然を守りつつ、守った自然を観光資源にするという取り組みで、「自然を守ること」がお金を生む仕組みです。最近は、大学も国際協力に関わっており、学生と共同で新たなフェアトレード商品を開発し、地元企業とエシカル消費に関する教材を作成するなど、実践活動も行われています。
文化から「持続可能な社会」のヒントを学ぶ
もう一つのテーマは、文化に関することです。国際協力の対象となる地域の文化の中には、相互扶助のシステム(困った人を助ける仕組み)や自然を守るための知恵が内包されていることが多く見受けられます。ですから、文化を守ることも持続可能な社会の実現に資するかもしれません。社会の「発展」の仕方は多様であっていいはずです。現地の視点からものごとを考えることが「持続可能な社会」のヒントになるはずです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
静岡文化芸術大学 文化政策学部 国際文化学科 准教授 武田 淳 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
開発人類学、文化人類学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?